『アンダーカヴァー』血に抗うか、従うか。

『アンダーカヴァー』

We Own the Night

2007・米 ジェームズ・グレイ

IMDb 6.9

Rotten Tomatoes 56%

あらすじ:部外者だけど、警察一家だから麻薬捜査に協力する。

ホアキン・フェニックスが出てるので、前情報もなしにHuluで鑑賞しました。

ザックリと感想を

地味、そして地味。だがそれがいい。

堅実な演出を淡々とこなしていく。だからこそ要所要所のバイオレンスや、役者の演技が際立ってくる。メリハリの利いた地味さが最高でした。

キャラクター配置も類型的ながら勘所を押さえているのでグッとくる。封建的父親とそれに従う兄。それに反発しながらも協力する次男。サスペンスがしっかりとドラマを盛り立てていて素晴らしいです。

拾いモノだとおもって得した気分でしたが、監督は、『エヴァの告白』のジェームズ・グレイ。本作も、受賞は逃したもののパルム・ドールにノミネートされてたみたい。

血筋に抗っていうから協力できる

警察一家に反発し、母の旧姓を名乗りながらクラブ経営をしている主人公。

警察署長の息子だが、仲たがいしているため周囲にも秘密にしている。

仲をこじらせて関係を公にしていないからこそ協力できるというシチュエーションはドラマチックで面白い。最初は非協力的だったのに、力を貸そうと決意するのもなかなか感動的だった。

名優揃い踏み、静かな演技合戦

淡々とした語り口で、役者の演技をジットリと見せていく。もちろん激したりする熱演があるものの、繊細な演技がとてもいい。

ホアキン・フェニックスの名演。相手に同調するふりをしながら、内心怒りを蓄える絶妙な表情がじっくりと堪能できる。

また、脇役ながらトニー・ムサンテが出演。最後の映画作品(ドラマには出演している)

タイトル

邦題のアンダーカヴァーは潜入捜査の意味だけど、実際には部外者だから、正しくはおとり捜査ではないか。

原題は、We Own the Night 俺達は夜の支配者。ニューヨーク市警、ストリート犯罪対策チームのモットー。

確かに邦題の難しい題材だ。

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まとめると

地味だからこそ映える演技、アクション。大仰ではなく、不意打ちのような演出でドキリとさせられた。にじり寄ってくるような緊迫感が素晴らしい。

↓ネタバレ感想↓

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1988年、ニューヨーク、ブルックリン。

ボビー・グリーン(ホアキン・フェニックス)はクラブの経営者だ。

警察一家、グルジンスキー家の次男だが、家族に反発し、水商売に準じている。名前も、母親の旧姓を名乗るほど、警察官である父と兄とは確執がある。

ハリウッドのやんちゃな二人、ホアキン・フェニックスとマーク・ウォールバーグが警察一家。それも凶暴なマークのほうが兄で警察官という配役。

2大スター共演ではあるものの、物語の比重はホアキンに大きく傾いている。

ボビーは久しぶりに家族と会う。兄ジョセフ(マーク・ウォールバーグ)と父バート(ロバート・デュヴァル)が警察内部の情報を話す。

ボビーのクラブに出入りしているロシアンマフィアの麻薬取引を立件しようとしている。そのため手を貸してほしいと持ちかけてきた。

ボビーは警察一家とは縁を切っている。なによりロシアンマフィアを警察に売ったとあれば裏世界では生きていけないクラブも立ち行かないだろう。

ボビーが警察に協力する理由はない。

ボビーの協力が得られなかったジョセフは強硬手段に出る。

予告もなく、クラブに“手入れ”を行いロシア人をしょっ引く。

しかし、起訴できるだけの証拠がなく釈放。

ボビーと警察の関係こそばれなかったものの、恨みをかったジョセフは銃撃され重体に。

ここまで、全体的に抑えめの演出で進んでいく。その分いきなりマーク・ウォールバーグが銃撃されるのにかなり驚いた。

かなり序盤で銃撃され、終盤まで入院。ダブル主演かとおもいきや、マークは脇役と言っていい。

兄弟の衝突する場面があるが、あまり見せ場はない。しかも銃撃がトラウマになって終盤活躍できないという貧乏くじ。

ボビーがジョセフの見舞いに行った後、ロシア人が現れる。兄弟とは知らずに、男は殺しを命じたことを語りだす。

本作の白眉はやはりホアキン・フェニックスの演技だ。ほかの役者もいいはいいけどあまり見せ場がないのがもったいない。

ホアキンのファンなら必見だ。

兄の銃撃を命令した男と対峙しながら麻薬ビジネスの話を聞き出そうとするところは、いわゆる演技している演技が絶妙なベストアクト。

兄が銃撃されてのを受け、ボビーは考えを変えて潜入捜査に協力することに。

潜入捜査は成功、隠しマイクの音声でロシアンマフィアを逮捕に追い込む。

しかし拘束したはずのロシア人が逃げ出してしまう。

ボビーは警察に守られてはいるものの車での移動中に襲撃を受ける。

カーチェイスシーンは見た目が地味ながら、なすべもなく目の前で父が殺されていしまう無常感が伝わってくる。

雨の中車のワイパーがこすれる音が鳴り続けているのも不安感を煽ってくる名シーンだ。

ボビーの居場所が漏れたのは、恋人が友人に話したからだった。

その男を問い詰め、取引の情報を得る。

銃撃戦の末、父の殺しを命じた親玉を打ち殺す。

その後、警察一家の一員として、警察学校を卒業、呼ばれる名前は、ボビー・グルジンスキー。父の姓だ。

警察一家として同じ苗字を名乗るようになるのもベタだけどぐっとくる。

総じて地味目だけど堅実な作品。上にあげた名場面だけでも見れて満足だった。