『キミとボクの距離』ティーンの住む世界に大人などいらない。

『キミとボクの距離』ティーンの住む世界に大人などいらない。

『キミとボクの距離』

The Space Between Us

ピーター・チェルソム

2017・米

Directed by Peter Chelsom. With Gary Oldman, Asa Butterfield, Carla Gugino, Britt Robertson. The first human born on Mars travels to Earth for the first time, ...
In this interplanetary adventure, shortly after arriving to help colonize Mars, an astronaut dies while giving birth to the first human born on the red planet -...

あらすじ:火星から来ました。

予告編を見て、火星というタイムリーな題材と、遠距離恋愛というわかりやすいモチーフに惹かれてみました。

それほど期待はせず、予想したくらいの面白さは保証されているだろうと高をくくってみると、なんだかが設定は雑だし、人物描写はおざなりだしでかなりのポンコツ。

『君のまなざし』みたいに端から珍作だと思ってみた時よりも、ガッカリ度合いは大きい。

ヤングアダルト感、というかラノベ感。魅力的なシチュエーションに終始するあまり、リアリティは脇に追いやられ、キャラクター描写もおざなりに。とりわけ主役二人以外の空虚さは見るに堪えない。

子供は純真で自由を堪能すべきであり、大人はそれを邪魔することしか考えていない。

すべてがご都合主義の塊で、都合よくピンチになり都合よく解決していく。

思春期の子供が書いた脚本だとすると、人物の幼稚さが納得できるが、書いたのはアーラン・ローブ(47歳)。『悲しみが乾くまで』が評価が高いみたいだが、どうやらスサンネ・ビア監督の手腕によるところが大きいらしい。その後はかなり低評価が続いている雇われ脚本家といったところ。

オリジナル脚本の『素晴らしきかな、人生』(哉ではない、ウィル・スミスのやつ)の大すべりも記憶に新しい。

好き勝手にふるまう子供が主役なため、いい歳した大人が見ると感情移入は難しい。

大人に束縛され窮屈さを感じている若者が自己投影するならなんとか見過ごすことができるかもしれない。大人は退屈で中身がなくゾンビみたいな連中ばかりだと心底から思っているなら甘い恋物語に集中できるかもしれない。

だが甘い恋愛要素に浸るには雑音が多すぎる。

雑多な要素が無造作に詰め込まれていてどこに集中していいかわかりゃしない。

端からリアリティのない恋愛ものとして作られていれば見やすかったかもしれない。リアリティのなさも、二人にはそう見えていたのではと補完もできる。しかし現状は、やたらと含みのある登場人物が多いうえに、何やら課題めいた設定も付属していてやかましいことこの上ない。そのほとんどはうやむやにされる。

メインディッシュとなる恋愛劇もかなり雑。火星から来た少年と、片田舎に住む少女。これだけでSF設定は出尽くし、地球で出会いを果たしたら、ただのロードムービーと化す。

モチーフになっているのか『ベルリン・天使の詩』が劇中に登場する。しかし、本作の場合は、種族としては同じ地球人だ。火星と地球での遠距離恋愛でもない。途中から地球が舞台になるので距離の問題もなくなる。低重力化で育ったせいで心臓が強くないみたいだが、それも逃避行途中に明かされるので別に葛藤の素材になりはしない。

自分の命をなげうって会いに来たのではなく、のんびり地球に来たら、いつのまにやら寿命を縮めている。泣けるのかそれ?

そもそも、主人公の目的は、彼女に会うためだけではなく、父親探しも含まれているので要点がぼける。主人公的にはどっちがメインなのか。うすぼんやりとしか提示されないためどちらもついでみたいに見える。

宇宙チャットによってそこそこ仲良くなってから二人は地球で直接出会う。この時点でSF要素まで持ち出して演出した距離感がゼロに。新海誠を見習ってほしい。 火星出身であることもさらりと明かす。そもそも火星人が迫害されているとかそんな設定はないのでなんの障壁にもならない。

縮める距離もなく、明かすべき秘密もなく、いったい何を見たらいいんだこのラブストーリー

女優に関するものすごく個人的な感想。

ヒロイン役のブリット・ロバートソンがかわいくない。美醜の問題ではない。かわいげがないんだ。愛嬌がまるでない。形の良すぎる眉毛が怒りをため込んでいるかのようで険がある。『トゥモローランド』のときも『アンダー・ザ・ドーム』のときも、人に好かれやすいヒロインにはなりきれていなかった。

逆に感じ悪い役には適任。『Girlboss ガールボス』の時ははまり役だった。愛想がないためまともな職に就けず、ネット上の商売で成功していくサクセスストーリー。ちゃんといけ好かない人物像を体現していた。

だが本作では、無条件で魅力的な人物かのようにふるまっているので余計に癪に障る。逃避行劇が始まると、人のタブレットPCを盗んだり、車を盗んだりとかなり手癖がわるい。アクション映画の逃避行とは違って、命の危険があるわけではない。むしろ火星人の彼はNASAつかまって治療を受けたほうがいい。

脚本のでき自体が悪いので、ヒロインの感じ悪さは女優のせいだけではないとはおもう。

悪い脚本にありがち欠点として、苦渋の選択でない選択で話が進んでいく。いわゆる「話せばいいんじゃね?」という状態。主人公の火星人は特に自分の気持ちも明かさず、地球に会いたい人がいるという目的も説明しないまま逃げ出す。心中は「大人はわかってくれない」という気持ちがひしめいているのだろうが、そこまで追い詰められているようには見えない。むしろ周囲は共感を示しているように見える。大人目線で見ているとかなり不快だ。

唯一のオリジナル要素である、火星から来た少年という要素も雑。地球に来て、一般常識はある程度知っているご様子、初めての雨に感動したりと地球になれていな描写がいくつかある。しかし、エジソンとニコラ・テスラの確執について豆知識を披露したりとかなり博学な様子。しかし、路上を走る馬を見て、エイリアンでも見たかのようにおびえる。そこで、本物を見るのが初めてとかフォローが入ったりもしない。一見面白げなシーンをつなげただけに見えるし、コイツが何を知ってて何を知らないかがまるで分らない。

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ネタバレ感想

映画は、主人公が生まれるまえ、母親が地球を飛び立つ場面から始まる。

チーフエンジニアが演説し、火星への並々ならぬ熱意を説明する。

演じるのはゲーリー・オールドマン。ただのゲーリー・オールドマン。何か活躍するでもなし、彼個人の葛藤や、火星へのあこがれにけじめをつけるわけでもなく、ただ物語を回すためだけに存在する。書割の大人その1

主人公の母親は火星移住チームのリーダーとしてシャトルに乗り込む。

象徴としての母親。書割の大人その2。しかも火星移住前にうっかり妊娠してしまうというポカをやらかすのでろくな印象を与えない。むしろ知ってて火星に行くぐらい尖ってたほうがよかったのではないか。出産後の出血により帰らぬ人となる。以降彼女の思いや人間性など明かされることもなく、ただただ象徴としての母親に徹する。

それから時は立ち、火星で生まれたガードナーは16歳になっていた。

ここはら始まってもなんの問題もない。全く実のない導入部だった。

主人公の母親代わりの女性が、書割の大人その3として出てくるけど、大した意味はない。

低重力のため、体がひょろ長く成長しているが、火星で暮らす分には問題ないようだ。

ガードナーは大人たちから隠れて、地球に住むタルサとビデオチャットで会話を日課にしていた。もちろん火星生まれとも言わず。病弱で外出できない地球人のふりをしていた。

互いに映像を見ながら、なぜか文字チャット。通信のずれに突っ込みを入れないようにと工夫を凝らしたんだろうか。ではなぜ映像はオンにしておくのか謎。

ガードナーは、火星での窮屈な生活にうんざりし、地球へ行くことを望んでいた。

タルサに会いに行き、父親捜しを手伝ってもらおうと考えていたのだ。

ガードナーは思春期真っ盛りなため視野がせまい。火星生まれが地球に行くリスクや、NASAとの兼ね合い。火星基地のクルーの心配などは眼中にない。年頃だと納得することもできるが、終始おむずかりなので単純にうっとうしい。

亡き母への思いとか、あったことのない父親とか、地球のチャット友達とか、いろいろと思いをはせてはいる。理由は理解できるが、その行動は共感できない。ただただ、火星に対する不満を漏らし、地球に行きたいとしか説明しない。正直、思春期のガキがおむずかりなご様子なだけで、ひっ迫感はまるでない。
許可を出す大人の方も、真意を理解して許可したわけではないので、相乗効果で全員頭が悪そうに見える。

周囲を説得し、地球へ降り立つ許可を得たガードナー

いざ地球に到着してみると、施設に缶詰にされてしまう。

ガードナーは施設を逃げ出しタルサに会いに行く。

ここまででもガードナーおむずかり描写は山ほどあって、好感度は急落していく。

施設を逃げ出す際、セキュリティ認証が必要になる場面があるが、ガードナーのヘルスチェック用のチップで、セキュリティの承認もできるので何の問題もない。

いったいどんなチップなんだ。どんな役割を兼任したらセキュリティを突破できるんだよわけわかんねぇ。

ガードナーはタルサと出会い。母の形見の写真を頼りに、父親探しの旅に出る。NASAの追っ手を振り払いながら逃避行が続く。

唯一のオリジナリティである火星人と地球人の恋の要素はほぼなくなる。対面で話をして凡庸なロードムービーと化す。

途中、虚弱体質のガードナーが全力疾走で飛行機に飛び乗ったり、飛行機が爆発してマイケル・ベイ並みの爆炎があがったりと、珍妙なシーンが続いていく。

逃避行は続き、車を盗んだりと手癖の悪さを発揮。

途中、タルサがドレスに着替えるシーンがある。(もちろん盗品)
女性が着替えて、男がそれをほめるなんてのはべったべたなシーンだけども、本作は、ネジ一本抜けている。量販店で服なんていくらでもあるのに、タルサが自らドレスを選んで、それに着替える。なんだこいつ見せびらかしたいのか。逃亡者じゃねぇか。というかあからさまにドレスなんて着てきたら男としてはほめるしかないじゃないか。ロマンティックでもなんでもねぇよそんなの。

やむおえずドレスしか着る服がないとかが演出ってもんじゃないのか。

写真を手がかりに父親の家に到着する。写真に写っていた男性がいたが、それは、母の弟、ガードナーの伯父であることがわかる。

写真に写っていたのが父親ではないことがわかり茫然自失となるガードナー。

かなり悲劇的なニュアンスで演出してるけど、伯父さんとは出会えているというチグハグさ。それはそれでプラスではないのか。

ガードナーは体も弱り、倒れてしまう。

追いかけていたNASAに連れられ、宇宙船に乗り、重力圏を抜ける。

ガードナーは意識を取り戻す。

まず、大気圏を抜けるGに耐えられないのではとか無粋なことは言ってはならない。

その後、ガードナーは火星で、タルサは地球で生きていく。
タルサが宇宙飛行士の訓練を受けている場面が映る。いつかの再会を匂わせて映画は終わる。

なんだかアイデアだけで何も煮詰めていない感じ。科学考証も手抜きで説得力に欠ける。その辺も含めて大味ヤングアダルトものな感じ。でもバカ映画ほど突き抜けてはいないので、思春期のガキのわがままに付き合わされている感じが強い。

最後のセリフは好きだった。「地球では火星を夢見て、火星では地球を夢見てる」いつもどこかで、誰かがどこかをゆめみてるってテーマにすれば普遍的な話になったかもね。

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