『思いやりのススメ』いい人のいい話。でも、もうひと越えほしい。

『思いやりのススメ』
The Fundamentals Of Caring
2016・米 ロブ・バーネット
IMDb 7.4
Rotten Tomatoes 79%


Netflixオリジナル
あらすじ:筋ジストロフィーで同じ毎日だったけど、初めての車旅行にいこう

監督はドラマ仕事が多い人で存じ上げない。

ポール・ラッドに惹かれてみたが、可もなく不可もなくといったところ。

息子を失った男が、難病を患った少年とかかわり互いに、前向きになる話。予想通りのいい話で満足とも言えるけど、予想以上のものが何もない。
トム・マッカーシー作品のような、いい人たちの心地よいやり取りがある。マッカーシー作品のような人間の弱さや後ろ暗い部分までには手が伸びないので、それが安心ともいえるし退屈ともいえる。良くも悪くもアクセントに欠けるお話。

ライトに思えた最強のふたりが絶妙なバランス感覚で作られていたと認識させられた。
The Fundamentals Of Caringというタイトルは本来、基礎介護の意だけどCaringには思いやりという意味もあるので、なかなかいい放題だと思う。

↓ネタバレ↓

作家だった主人公は、幼い息子を亡くしたショックから作品を書くことをやめ、介護職に転向すべく資格を取る。

筋ジストロフィーの少年の専属介護の面接を受け採用。

女手一つで育てられたこの少年は扱いづらい患者で、嫌がらせを繰り返し、何人もの介護士がやめている問題児だ。しかし主人公とは気が合ったらしく徐々に打ち解けていく。発作の振りなどでいたずらされながらも順調に距離を深めていく。
ここまでで、いまいち少年がなぜ主人公の採用を決めたのかがよくわからない。

少年から3500までで好きな数字を当てて、と数字あてゲームを出される。主人公ははずしたらしい。もしかしたらこのとき、はずれと言いながらも当たっていたのかもしれないが、それも伝わりづらい。
少年がかねてから行きたいと思っていた、世界一深い穴へ車旅行へ行くことになる。1週間だが母親と離れての初めての旅行だ。
ここからは、ロードムービーとして、それなりに楽しい。新しい体験や出会いなどもあって退屈せずに見られる。途中、家を出て、進学先までヒッチハイクをする少女。田舎に変える途中に車が壊れた妊婦もつれて旅がにぎやかになる。
少年と少女が初めてのデートをして、向かいの建物から大人二人がそれを眺めるというのは微笑ましい名場面だった。
旅の途中、意を決した少年が父親に会いに行くと言う。病気が発覚して、息子を捨てた最低の男だ。毎年手紙を送ってくるものの、会うのは初めて。
どうなるかと思いきや、父親は想像を超える最低なやつで、手紙を書いたことがないという。どうやら母親が書いていたもののようだ。
父親への幻想を捨て去ることで成長したようだが、母と別の問題が生まれてしまったように思うのでいまいち良い場面とは言いづらい。
ついに目的地である深い穴に到着。ここで、少女の父親が心配してついてきたことがわかり、和解する雰囲気だが本編との関連は薄い

そしていきなりの陣痛、出産。主人公はそれに立ち会いながら息子が死んだときの場面を思い出す。
それまでは断片的にしかわからなかった事故の場面。てっきり、目を離した間に車に引かれたのかと思いきや、主人公が、パーキングブレーキをかけ忘れ、自分の車の下敷きになったというのが真相らしい、その後、病院のストレッチャーに乗っていたことから、出血多量とかショック死したことが想像できる。
この場面は、命の誕生によって、死を乗り越えるという感動的な場面のように演出したようだが、いくらなんでも息子の死に方が壮絶すぎて感動できない。最近起きたアントン・イェルチン死亡事故も思い出してしまい。感動どころではなかった。

その後、少年が言っていた立ちションがしたいという夢をかなえるべく、ストレッチャーに体を固定して立たせ、世界一深い穴の展望橋から立ちションをする。
車椅子生活の少年が立ちションがしたいというのは、健常者にはわからない感覚でなるほどと思った。そうはいっても、共感度が高いとは思えない。それなのに観光地のど真ん中でそれを行って、ロングショットで周囲を見渡しながらの描写、しかも風景は予算の限界を感じるCGI。立ちション、周囲への迷惑、ショボいCGの三重苦。クライマックスなのに感動ポイントしていちばん的外れな気がする。

最後にデュシェンヌ型筋ジストロフィーが男児3500人に一人発症するということがわかる。彼がいつも言ってくる数字当てゲームは、自分の病気がどれくらいの可能性で起きるのかを常に再確認していたのだ。不運を呪っているのか、確率論を皮肉っているんか、胸の内は容易には推し量れない。

プロローグ、主人公は旅から帰って作家に復帰するべく物語を描きだすところで終わる。

いい話ではあるものの、いい話だけで終わってしまっている。特に主人公と少年の関わりはいい関係だが、少年側が甘やかされて癒されているだけにしか思えない。旅の途中、妊婦を送ってあげようと言い出す場面はあるが、いかんせん運転は主人公なので、自ら何かを成し遂げた感じがしない。

見て損もないし満足感もない。ただ難病ものなので低評価が付けづらい。

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