『ミュージアム』前半、セブそうでセブくない、少しセブいセブン。

『ミュージアム』

2016・日

大友啓史

IMDb 5.8

Filmarks 3.8

あらすじ:連続猟奇殺人、次の標的は妻かもしれない。

プレミア試写会での鑑賞。謎のカエル男がさらっと舞台挨拶に現れて軽いネタバレ気分。

ザックリと感想を

良作です。旬のスタッフとキャストが揃って全力で作り上げたサスペンス・スリラー。十分に満足できる作品。

過去の類似作品と比べると既視感や見劣りする部分もありますが、映画ばっか見ている映画脳の人たちはそれを探すのも楽しい。

色々と粗も多い作品ですが、それがどこか愛嬌にも見えてくる好感のもてる良作です。

安心保証

あらすじや予告編から想像できる面白さをしっかりとこなしてくれている。

前情報なしに見て十分に楽しめる。

原作漫画にかなり忠実なため、原作ファンも満足。ハラハラするサスペンスと、鬼気迫るシチュエーション。休むことなく場面が展開するので飽きずに見ることが出来た。

しかし、語り口が丁寧かつ説明超過ぎみで、特に後半になると失速感があるが、それも愛嬌のうちかも。

丁寧すぎるほど丁寧でバカ真面目

おんなじ回想シーンが4回あったりするあたりは、フツーに出来が悪い部分ではあるけど、本作に限っては、おもてなしをしようとするあまり、力が入りすぎてありがた迷惑になっているような憎めない手触り。

他にもいかにも日本映画らしい、家族ドラマや説明ゼリフもなんだか、気を遣われているようで嫌いじゃない。

後半の愁嘆場も、邦画らしい絶叫場面が多めになってくるが、それはそれでおかしなテンションに連れて行かれる感じで楽しくなってきてしまった。

グロそうでグロくない

残虐描写がそこかしこにある。

しかし、実際の凶事はハッキリとは見せず、事後の描写などが多めでそれほど真に迫ったものはない。

死体の描写なども、チラリと映して、新米刑事が嘔吐する場面に切り替わったりとじっくりとは見せない。

ぬるいと言えばぬるい描写ではあるものの、本作のような大衆向けエンターテイメントとしてはそこも気配りのように思えて来るのでマイナスではないように思えてくる。

全力の真面目の隙間に、ポンコツ

映画好きな人達には、一番オススメしたいポイント。

力作ではあるものの、力が入りすぎておかしなバランスになっているところが多々ある。詳しくはネタバレして言いたい部分。

サスペンスとしてしっかりと空気感を作って、役者陣も全力の演技を披露しているが、時折すっとぼけた描写が入るのがたまらない。

2016年に「今なんて言った!?違うその前だ!」ってセリフが聞けるなんてむしろ嬉しい限り。

主人公がこらえ切れず怒りを露わにするシーンも必要以上に尺が長いため、コントみたいな余韻を産んでいる。

カエル男の筋が通っていそうでチグハグな行動とか、むしろツッコミ待ちの芸風に達していたりと枚挙にいとまがない。

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まとめると

サスペンスとして良作。

そして、隙間隙間に配置されたさじ加減のおかしな演出。その愛嬌によって、矛盾や欠点がなんだか個性のようにも思えてくる味わい深い作品。

他の監督で言えば、デヴィッド・フィンチャーなんてことはなく、M・ナイト・シャマランのような憎めない作風だと感じた。

それと

ミュージアムといえばこの曲。

IFrame

IFrame

↓ネタバレ感想↓

主人公沢村のフラッシュバックから始まる。

沢村(小栗旬)は妻が出ていったときのことを夢に見ている。

5歳の息子の誕生日も忘れていた。

当の息子は、沢村になついていて、お出かけした絵をかいたりと仲は悪くはなさそうだ。

妻は、仕事一筋の沢村に愛想を尽かして出て行ってしまう。

「いい刑事かもしれないけど、夫として、父親としては失格よ」

かなりサクサクとした編集で、ウェットな家族モノとしての説明を終わらせるタイトなつくり。

これは期待できるぞ!と思ったら、おんなじフラッシュバックが賞味4回は出てくる。バカ丁寧だ。

鈍重だとかまどろっこしいとは言わない。丁寧だ。

もしかしたら、さっき見たよってツッコミ待ちなのかも。応援上映ができそうなくらいこの後もツッコミ所が続く。

一人目の被害者、ドッグフードの刑

沢村が現場に到着すると、後輩の西野(野村周平)が嘔吐していた。よほどひどい遺体らしい。

どうやら生きたまま拘束され、腹を空かせた犬に食い殺されたようだ。

犬の胃袋からは、ドッグフードの刑と書かれたメモが出てきた。

遺体の発見場所。どっかの排水路なのか、立入禁止の場所にある。どうやって発見されたんだ。

犯人のカエル男は、あとあと死体を作品として見てほしいようなことを言っていたけど、立ち入り禁止の奥深く。ミュージアムとしてはいい場所じゃない。

アーティストは“売り方”も大事でしょうに。

細かいとこだけど、

後輩との会話で「寝てないんですか」って訊かれる。寝てたシーンから始まったじゃんこの映画。

被害者には、同棲している彼氏がいた。

話を聞きに行くとかなり取り乱している。

どうやら、同棲を始めるために犬を手放し泣く泣く保健所に送ったらしい。

それがドッグフードの刑の理由なのか。

まず、彼氏が思い出深げに写真を見ながら泣いている。

犬と一緒の写真が写った後に、沢村が「犬と聞いて心当たりはありますか」と質問。

順序がおかしい。

観客はさっき写真にあったよとなるはず。このボケは伝わりにくい。

そして、彼氏は、何があって死んだのかと西野に詰め寄る。

それをたしなめるように西野の肩に手を置く沢村。

手を置くべきは取り乱してる人じゃないのか?とってもシュールな画。

二人目の被害者、母親の痛みを知りましょうの刑

ここは実際に事件が起きる場面から始まる。

引きこもりオタクが一人で自宅にいると、カエル男が忍び込む。オタクは気絶させられる。

ここは恐ろしいほどツッコミ待ちの場面だ。引きこもりのくせに身なりが整っている。ご綺麗なオタク。

部屋の中には、エロゲーやらアニメやらのポスター、タペストリーがべたべたと張られている。

いかにもなオタクオタクしたオタク。

でも引きこもりなのにドアの外側にもタペストリー。

FPSゲームをプレイしながら死ね死ねと連呼する語彙の少なさ。

たいした尺でもないのにこれほどツッコミポイントがあるのも大したものだ。

いわゆる大衆に引きこもりのオタクをアピールしたい場合はこうなるやもね。

侵入者におびえるオタクが独り言ばかりだとか言ってる映画好き屁理屈バカにも気が利いている。

独り言ばかりで、リアリティの無いの演出

ではなく。

普段から独り言ばっかり言ってゲームをやっているオタクとして行き届いた人物描写がされているのだ。

もしかしたら実況プレイを配信している裏設定でもあるのか。

オタクはカエル男に体の一部を切り取られる。

カエル君、二人っきりなのになぜだか、覆面姿。

母の痛みといいながらまず頬の肉を切るあたりがちぐはぐな気もする。まず股から行くべきではないか。

カエル君の一挙手一投足すべてに小ボケが挟まれているように思えてならない。

それにしてもここは『セブン』の強欲の罪と全く同じだ。しかもセブンでは自分で切り取る部位を選ばせていたから、本作のほうがダウングレードされている。でも、重さは、500グラム(1ポンド)から3000グラムに増量。(どっちにせよ死ぬ)

大体の人は、母の痛み 3000グラムと聞いてなるほど出生体重だなとわかるはず。

次の日、工場の跡地に忍び込むカップルがいた。自宅には親がいてホテル代もケチるような彼氏。人のいない場所で、致そうとすると死体を発見した。

このシーン全くいらない。カットしてもなんの問題もない。でも原作通り。大友監督の完全実写化へのこだわりを感じる。

現場に沢村が来ると、西野はやはり吐き気を催していた。死体のそばには、母親の痛みを知りましょうの刑とかかれたメモがあった。

沢村と西野が食事をしている。

沢村は、西野に説明する「3000グラムは出生体重だ」

納得する西野「なるほど。だから母親の痛みを知りましょうの刑か」

こいつわかってなかったのかよ。この映画ボケ担当が多すぎる。

牛丼をかき込む沢村に対し、西野の方はまったく箸がすすまない。死体をみて食欲がないのだ。

「あれをみてハンバーガーくらいぺろっといけるようになれ」と沢村。

なぜ牛丼を食いながら、チャーハンを食べられないに奴にハンバーガーを引き合いにそんなことを言うのか。

そうです前振りです。

沢村が水を注ごうとすると、向かいに座っているフードの男が水を注いでくれた。

フードの男は、左手の指先のけがをしている。

それを見た沢村は、西野に、先ほど見た死体について説明する。

「頬を抑えながら肉を切り取ろうとすると、相手は噛みつく、左手に怪我をしている可能性が高い」そこまで言うと沢村は店の外へと駆け出す。

フードの男は犯人だったのかもしれない。しかしすでに遅く外には誰もいなかった。

やたらと指に注目してるかとおもったのに何も気づいてないのかよこいつ。(原作通り)

捜査チームは進展がない。二つの事件当日は、雨の日だったことがわかる。

「雨の日は注意が散漫になるからそれを狙ってだろう」

さも常識のように何言ってんだこいつ。証拠を洗い流すとかじゃないのか。

捜査のまとめをしているところに西野が駆けつける。

被害者二人の接点が見つかったのだ。過去の事件、少女樹脂詰め殺人事件。その裁判員だったのだ。

それを聞いた沢村は驚く。「今なんて言った!?」

西野「裁判員をしていて」

沢村「違うその前だ!」

パロディでやっときける化石みたいなセリフ。ここも原作通り。大友監督の完全実写化に手抜きはない。

焦りだす沢村。沢村の妻も、その事件の裁判員の一人だったのだ。連絡を取ろうにも、電話がつながらず、家を出て行ってから居場所がわからない。

その後、裁判長、裁判官、裁判員、次々に関係者が殺されていく。

しかし警察の捜査は難航。容疑者さえ浮上しない。

樹脂詰め事件の犯人は天涯孤独。復讐の線は薄い。有罪確定後自殺しているため本人に話を聞くことはできない。

このあたりはテンポもよくて非常に楽しい。

不倫に対して、愛を均等にの刑として、体を真っ二つにするのはなるほどと思った。

それに比べると、インチキ占い師がハリセンボンの刑で実際針を飲まされるのはまったく想像の範疇。

美容整形好きが、ずっと美しくの刑で冷凍保存されるのもベタ。しかし別に冷凍だけでいいのにわざわざ全裸にして下の毛まで移す下品さはとっても嬉しい。

沢村は身内に関係者がいるということで事件の担当を外されてしまう。 抑えようのない苛立ちに駆られる沢村。

このシーンが絶妙に長い、唸り声をあげる演技では間が持たずうろうろしたりと何とも言えない余韻を残す。

謹慎を言い渡された沢村だが、命令に反し一人で行動する。妻の友人に会いにいき居場所を訊く。

友人のセリフがなんだかおかしい。

ここのセリフがなんだか手触りが悪い。

妻の友人「沢村くんの父親の顔見たことない」あれ、別に知り合いの父親に会ったことないのなんて普通じゃないか?なんでこんなピリピリした言い方なんだ?あと妻も沢村だろうに沢村くんと呼ぶのか。「夫の顔も」ああそうか父親“として”の顔ってことね。妻が実は流産していたという話。「第二子のときよ」二人目って言わねぇかな。看護師だからちゃんとした言い方しちゃったのかな。

妻の友人は知っているような様子だが、なかなか居場所を教えてくれない。

なぜか殺人犯に狙われているとは言わない。

沢村はなんとか妻の居所を聞き出す。

すでにカエル男は、沢村の妻と息子を眠らせ、それぞれ衣装ケース入れて運び出していた。

アレルギー症状で、ビタミンDが足りていないと思うけど、結構体力はあるみたい。

樹脂詰めも写真でみたらバスタブぐらいあるから200キロはありそうだったけど、どうやって運んだのか。

虚弱体質かと思いきや、侮れない武闘派なのでは?これは重要な伏線だ。

沢村は、妻のところに向かう途中。偶然すれ違った車の運転席にカエル男が乗っているのを見て後を追う。

かなり地味なカーチェイス。だがそれがいい。日本ならではの地味さ。

大友監督の過去作でも見せていた、低めの固定カメラでの臨場感や、狭い路地でばたばたやる親近感のわく地味ながらスリルある演出。こじんまりした緊迫感がとてもいい。

カエル男に迫ったそととき、沢村の車は横転。逃げられたかと思いきや、工事現場に放置されていたトラックが沢村の車に突進してくる。

緊迫の一瞬……あれ?トラックごときじゃ別に乗用車をつぶせはしないんじゃないか?トラックが押してくる先が崖ならまだしも、延々とぶつけてきて何をするんだ?またも伝わりにくいボケを挟むカエル君。

沢村が脱出すると、カエル男もトラックを降りる。弱った沢村を置いて、カエルは去って行った。

何がしたかったんだ?

3年前の回想が始まる。別に疑問に思っていないけど回想が始まる。誘拐事件よりも丁寧に回想だ!

樹脂詰め事件の裁判中。

裁判所から出てくる裁判員をカメラ撮影している怪しげな男がいる。

彼こそがカエル男だった。

自分の作った芸術的な死体が別の人間の手による犯行だと裁判で決まってしまうことを危惧している。

というか、写真撮っている時点で冤罪確定だと思ってんじゃないの?

なんなら樹脂詰めもう一個作れば即時解決なのに何してんだ?

へんな心配するより作品作りに没頭すれば、今回の事件は全く必要なかったよね?

いくら悩もうと、作品を作ることでしか解決しないよ?

もっと自分の作家性を信じようよ!

樹脂詰め事件の際、沢村の妻は、裁判員として参加していた。

有罪判決を目の当たりにし、その後犯人の自殺を知った彼女は、体調を崩して流産してしまった。

ここで豆知識、裁判員を断ることができる理由の一つに「妊娠中又は出産の日から8週間を経過していない」がある。

再び現在

沢村は、事件から身を引いたふりをして、西野に資料を持ってきてもらう。

「これくらいお安いご用ですよ」という西野。

沢村は「ありがとな。こんど婚約者にも会わせろよ」

死亡フラグをむき出しのままでねじ込んでくる。丁寧。

樹脂詰め事件の資料を見直す沢村はあることに気付く。

「復讐にしては、手が込んでいる」

ものすごくフツーの感想だ。敏腕刑事ならではの勘とかではない。事件に巻き込まれたから気づくとかでもない。

小学生でも気付く(幸い全年齢作品だからね)とても、てがこんでいると、おもいました

今回の事件と、過去の樹脂詰めの死体に“同じにおい”を感じた沢村は、樹脂詰め事件の真犯人はカエル男だと確信した。

これはミステリーじゃなかった。何となく犯人が分かった感じ。

すると空気を読んだカエル君登場。

沢村は西野に推理(?)を話していると、背後にカエル男の姿が

沢村ー後ろー後ろっ!

すかさずカエル男を追いかける二人。

いいタイミングだ。さすがかまってちゃんのカエル君だ。

沢村と西野はカエル男を追いかける。

西野が先に追いかけていく。すると沢村の携帯電話に電話が、カエル男の声だ。

指示されたビルの屋上まで来ると、西野が屋上から落とされそうになっていた。

西野のネクタイをつかんでいるカエル男、ぎりぎりのバランスで西野が立っているように、

見えない。

手足は縛られているものの、かかとまでしっかりと設置。しかも西野の方が上の段に立っているので、腹筋を活かせば何とかなりそうなバランスに見えてしまっている。

原作では『オールド・ボーイ』みたいに同じ高さでネクタイを持ってるけどね。さすがの大友監督も安全を配慮して実写化を断念。

カエル男は、事件の真相を話す。

「樹脂詰め死体は僕の作品なのに、裁判で別の犯人になってしまった!」

沢村の推理のながれを把握しているかのように真相を語ってくれる。丁寧。

だからもう一個、樹脂に詰めときゃこんなことにはならなかったのに。

「あれは僕の作品なのに!僕は人を楽しませるアーティストだ!」

その割に作品の展示場所に問題がある、という小ボケ。

「惜しいが、時間のようだ」そう言ってカエルは西野のネクタイを離す。

西野は屋上から落下し、死亡してしまった。

雑な死体の出来上がり。

西野は作品には値しないということか。刑の名前も思いつかなかったみたいだし、ほんと作家性のかけらもないアーティストだ。というボケ。

相棒を失った沢村は、決意を新たにカエル男を追う。

後半

『ミュージアム』後半からの怒涛の展開。全力の愁嘆場が生み出すグルーヴ感。
『ミュージアム』 2016・日 大友啓史 IMDb 5.8 Filmarks 3.8 ...