『マグニフィセント・セブン』宿命と使命は微妙に違う。

『マグニフィセント・セブン』

The Magnificent Seven

2016・米

アントワーン・フークア

IMDb 7.0

Rotten Tomatoes 63%

ニッショーホールでの試写会で鑑賞。スクリーン小さい。

ザックリと感想を

想像をはるかに超える想像通りの圧倒的普通。

ハードルはそこそこ高い感じで見に行ったんですが、ものすごく手ごたえがない感じでした。期待以上でも期待外れでもない、ふんわりした満足感。

いわゆるフツーに面白い。

やることはやっている。 全く悪い作品ではない。むしろかなりの傑作と言っていい、けれども、やはり『七人の侍』を超えている部分がないのと、監督の前作『イコライザー』を下回る普通の映画なのが残念なくらい。しかし相対的に評価は低くなりがちだけど、全然悪くない。

圧倒的普通からの盛り上がり

中盤まではかなり普通。悪逆非道な奴が出てきて、非力な農民が助けを乞い、偉大な男たちが協力する。フォーマット通りのことはやっているけど、原作、過去作と比べ尺が短い分、淡白な印象。

キャラクター描写も物足りない感じで、魅力的な人物というよりは、役者の魅力だよりな感じ。娯楽映画なのでそれで間違いではないんだけど、結局、登場人物の名前よりも役者の名前しか記憶に残らない。

文句なしのクライマックス

後半はいやおうなく熱くなれた。間違いなく全力投球のアクションシーン。クライマックスは文句なし、命を懸けた戦いに挑む男たちと、非力ながらも参戦する農民たちはぐっとくる。

でもフォーマットがよくできていいる以上の要素はあまりない。

そのため大迫力の活劇シーンを見ても、もっとドラマとして盛り上がったんじゃないか、と勿体ない気分がちらつく。

前半のキャラクター描写が弱い分、戦いの段になってもなんだか予定調和な感じも否めない。

農民たちで記憶に残るのは、ヒロインポジションのヘイリー・ベネットくらい。あとはほとんど書割。その他大勢でしかない。むしろヒロイン目立ちすぎだったから、七人にの中に女性を入れたらもっと現代的になったかもしれない。

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まとめると

総じて人物描写があっさりめ。しっかりしてたのは、リーダーのデンゼル・ワシントンと敵役のピーター・サースガードくらい。

七人の配役も、人種がさらに多様になっているのはいいとしても、それが活きている場面が少ない。人種ジョークが言えるくらい仲良しになったという場面はあるものの、ドラマとしてはほとんど関係ない。黒人奴隷の要素もなく、南北戦争の影響は匂わせる程度、ネイティブ・アメリカンは、なんとなく部族のはみ出し者と説明されあとはただの便利屋状態。イ・ビョンホンに至ってはザックリとアジア出身ということになっている。テーマ性なんてものではなくただの商業的な事情としか見えなかった。

とはいえ、『ローグ・ワン』の前半ほどのマイナス要素はないので、評価点ゼロからクライマックスを堪能できた。

金の採掘を生業にするボーグ産業は、土地の確保に躍起になっている。保安官を買収して村人を脅して安く土地を買い叩いていた。

この時点で少し乗れない。七人の侍も荒野の七人も、どちらも収穫した穀物を奪われるところが発端となっている。

今回は、金脈がある土地を守るための話になっている。もちろん西部開拓の時代において、自分たちで作り上げた村に愛着があるのはわかる。しかし、命を脅かされてまで反抗するのは合点がいかない。旧作での、命と直結した食を守るための戦いとは大違いだ。

おそらくは、現代的な悪役として、利益追求する資本主義的な悪役、リーマンショック以降の悪役として描きたかったのかもしれないけど、どうにも勘所を外してしまっているように思う。

まあ資本主義は神に許されているとかいいなあら悪事を働く適役はトランプ的ともいえるけど、でも、味方側も金脈を守るような構図になるとテーマの行きつく先がわかりにくくなるように感じた。

ボーグ(ピーター・サースガード)に夫を殺されたエマ・カレン(ヘイリー・ベネット)は村を守るため、腕利きを雇うために隣町まで行く。

ここの段階は妙にテンポよく省略していく。夫が殺された後に、デンゼル・ワシントンが登場し、すでに人集めをしているエマが声をかける。

話は早いけど、用心棒を雇おうと決意する場面は必要だと思う。一番ドラマが動き出す場面のはずが、シーンが飛ぶといつの間にか話が進んでいるので置いて行かれた感じに。

サム・チザム(デンゼル・ワシントン)は、エマの話を聞き、ボーグが関わっていることを知り協力することにした。賞金首や昔馴染みに声をかけ仲間を集める。

ここもあっさり風味。サムとボーグは過去に何かしら因縁があることを匂わせるが、多くは語られない。

私怨

あとあと、サムは、家族をボーグに殺されているということが判明する。

動機としては非常にわかりやすくはなっている。しかし、そんな宿命めいた巡り会わせがあったらそもそもボーグを討つのが当然過ぎて、農民に協力するのがかえってドラマチックでなくなっている。

結果的に言えば、サムは自分の私怨のために農民たちやほかの仲間を利用したようにも見えかねない。

この事実が明かされるのは物語終盤なので、見ているうちは気が付かないけど、サムとエマの出会いは本作一番のご都合主義展開。たまたま声をかけた腕利きは、共通の敵に恨みを持っていたなんて都合がいいにもほどがある。

サムは自分の過去について仲間に話していないみたいだし、命を預ける間柄としてもなんだかいい印象はない。

良い点を挙げれば、復讐ものとしてわかりやすいカタルシスが得られるところか。でも欠点のほうが多いと思う。

サムは7人の仲間を集め村へ。農民たちと力を合わせ、銃の特訓や、罠の準備をする。

準備シーンからの大立ち回りまでは、もともと優秀なフォーマットのおかげで苦も無く見られる。しかし印象に残る農民がいないのが残念。銃が苦手な奴が本番で命中させるとかそういった活かし方もなかった。

ボーグは大勢の腕利きを連れて村を襲いに来る。

その前夜、グッドナイト(イーサン・ホーク)が戦いに恐れをなして逃げ出す。

南北戦争時のトラウマがあるらしい。

ついに攻めてきたボーグの大軍を迎え撃つ6人と農民たち。

一進一退の攻防が続くが、ボーグはガトリング銃を持ち出し。6人は劣勢に。

すると逃げたはずのグッドナイトが戻ってくる。

トラウマも振り切ったのか銃の腕も現役に戻っている。

でもなんでものどってきたのかしら。

『スター・ウォーズ4』のハン・ソロもそうだけど、何のきっかけもなしに戻ってくるのはあまり好きじゃない。

ガトリング銃が運ばれるのを見て引き返す場面とかあってもいいじゃないか。

何とかガトリング銃を爆破。サムは、ボーグに早撃ちを挑み見事勝利する。

犠牲はあったが村は救われた。

生き残った男たちは村を後にする。

なんだかそれだけって感じ。

旧作の田植えのシーンのように、これから息づいてくるものが感じられずかなりあっさりと終わった印象。

勇気をもらったとか、戦う意思を持てたとかそれを端的に表す描写も少ないので、勝利の余韻くらいしかない。