『ラブライブ! サンシャイン!! 』08 ご存じでしょうか。花田十輝という優秀な脚本家の名前を。

『ラブライブ! サンシャイン!! 』

第08話「くやしくないの?」

あらすじ:東京にきたはいいけれど。

花田十輝先生の最高傑作!

ふだんから皮肉っぽく貶してると、褒める段になって言葉選びが難しい。

完全にオオカミ少年状態。

でも今回は掛け値なしに本音で断言できる。

面白かった。

間違いなく。

花田十輝先生の最高傑作!

この“先生”も皮肉ではなく、歴とした敬称です。

今回は、主人公かつリーダーのチカが自身の動機を見つめ直す回だ。

前シリーズは、廃校という命題に向けてメンバーが努力し、問題解決後は動機が空中浮遊していく安定感の無さにやきもきしたものだ。

しかし本作は違う。

前シリーズで完全にあきらめていた、疑似スポーツものへの昇華をどうどうと成し遂げている。

スクールアイドルの設定のあやふやさは相変わらずなものの、ラブライブ出場の前に圧倒的な壁があることを提示し、現実での甲子園のような格の高さを設定できている。

それにより、スポーツものとしてのドラマ性を吹き込むことに成功し、さらにはそこに挑むキャラクターたちの実在感を底上げしている。

そして、アイドルの肝であるところの

頑張る女の子たちを描くという舞台立てが完璧に整っている。

花田十輝先生の最高傑作!

↓ネタバレ感想↓

ライブ本番。

Saint Snow のパフォーマンスに圧倒される Aqours メンバー。

尺が短い気もするけど、やっぱり手書きのみのダンスシーンは贅沢で見ごたえがある。

さらには、チカの感嘆の表情がしっかりと描写されている。

作中でのアイドル力は数値化されないため、それを評価する目線が必要だ。

Saint Snow の実力が53万を超えているかはさておき、Aqours のはるか上を行っていることは分かる。

そしてAqours の出番。

場面はカットして、オープニングへ。

本編が始まると、

ライブは終了し、東京観光に出かけるメンバー。

どこか沈んだトーンのみなに対し、少し無理をしているような明るさのチカ。

絶妙な省略演出。

レベルの違いを表現するために、格上のほうの映像だけを写し。

最下位であるAqoursの映像は静止画で振り返るという構成。

本来視聴者が応援したいはずのAqoursのみじめな姿を映すことなく、現ラブライブが異常なインフレを起こしていることを知らしめる。

ヤムチャがわざわざ醜態をさらさずとも、フリーザの脅威は描ける。

しかもそこの時間カットをアバンタイトルからのオープニング跨ぎで処理する自然さ。

ライブの出来としては

「声はちゃんと出ていて、ミスも少なかった」

なのに落選。

もはや、頑張っていればそれでいいじゃない、なんて時代は終わったのだ。

先人たちの起こした革命は、異常なまでの実力主義へと移行していた。

その結果。

大会運営から、観客の投票結果を渡される

圧倒的なパフォーマンスを見せたSaint Snowでさえ落選。

驚くメンバー「あの人たちでさえダメなんだ」

そしてAqoursは

まったく1票も入っていなかった。

現実は非常である。

そして追い打ちをかけるようにSaint Snowの一人が声をかける。

「バカにしないで、ラブライブは遊びじゃない」

前シリーズとは違った話になることを決定づけるセリフだが、それを言わせるキャストにそれだけの力量があるとは思えないのが少し残念。

むしろ彼女たちも入賞できていないからいいのか。

メンバーたちは落胆というより、驚きと現実の厳しさを痛感したようなリアクション。

ここで湿っぽいリアクションはない。(こんなの前から知ってる花田くんじゃない)

そして、電車で帰りにチカが言う。

「東京に呼ばれた。それだけですごい」

もっともな意見だ。彼女は当初、何かに夢中になりたい。そういった浅い動機でスクールアイドルを始めた。

メンバー集めやPVの投稿など、ランキングが上下しようともそれは自分たちだけの狭い世界での出来事だった。

それを東京に呼ばれるとは、もう彼女は、何かに夢中になるという目的を達してしまったことになる。

本来であればもう当初の物語は終わってしまっているのだ。

満足そうなもの言いとは裏腹に、どこか沈んだ表情のチカ。

もしかしたら、ココでスクールアイドルは終わりにしてしまうかも、そんな雰囲気がメンバーを包む。

自分の本当の気持ちも整理できていないようだ。

8話目というのは少し遅い気もするが、

いったん、視聴者に本作の物語の弱さを再認識させている。

それも、チカ自身の心の流れと同期させて行っているので、かなり高度な脚本と言えよう。(こんなのぼくらの花田くんじゃない)

巨人の星だって、父親に言われるままではなく自分自身の動機として仕切り直す場面が必要だ。

Aqoursの敗退を知り、やはりそうかとうなずく3年生組。

彼女たちもまた、スクールアイドルに入れ込み、ラブライブに挑んだ過去が明かされる。ライブ会場の雰囲気に圧倒され声を出すこともできなかった。

以前から、Aqoursの活動に苦言を呈していたのには理由があった。

同じ生徒会長でも、バレエをかじったくらいで、アイドル批判をぶち上げるロシアかぶれとはえらい違い。

でも話の中で出てくるエントリー数が7000以上はさすがに多すぎじゃないか?

高校の数を超えている。

2015年版若者白書によると高専を含めても6000くらいだ。1校複数組参加でも異常な浸透率だ。

チカは自室にもどり、寝転びながら、ぼんやりとポスターをみて何気なく手を伸ばしてみる。頭によぎるのは、一票も得られなかったことばかり。

手を伸ばしても届かないという悔しさを、映像だけで読み取れる深みのある演出。

リコは、心配してチカの様子を伺うが、姿がない、家の前を見ると海に入っていく姿が見えた。

思わず外に駆け出すと、海から飛び出すチカ。

「何かが見えると思った」

第02話のリコのように何かが見つかる思ったのだ。

やっぱり、あの時“海の音”は聞こえていないほうが作劇としてはキレイだったのではないか。

海の音(今回は見えると言っているが)は、求道者しか感じられないものと定義していたほうが、今後も物語の重要なモチーフとして使えたはず。今回含め、あんとき、何か感じ取ってたふうじゃんとツッコミの余地が生まれてしまった。非常に残念な要素。

今回の場面では、まだ聞くことがデキないとして、

最終的に、リコとチカが同じ世界観を共有できて初めて、同じ音が聞こえるという感動な場面が設置できたはずなのに。

海に潜ってみても、チカには何も見えなかった。

「だからこそ続けたい」

まだ何も見えていないことがわかった。スタートラインにさえ立てていなかったとわかったのだ。

「あれだけがんばったのにくやしいじゃん」

リコに励まされ、スクールアイドルを続けることを決意する。

そんな二人のやり取りを見ていたメンバーも駆け寄ってくる。

なぜか集合しているメンバー。おれもいるぜパターン。みんな心配してたと言えなくもないか。

優秀な脚本も演出も尺の短さには勝てなかった。

今回の新たな決意によって、ラブライブそのものが物語の重要な推進力として立ち上がってきた。まるで前シリーズの話の弱さの雪辱を果たすような気持ちのいいお話だった。

“何か”しか求めていなかったチカが、初めて打ち込んだことだからこそ、初めての悔しさを味わう。

描き方こそ違うものの、花田先生の過去作『響け!ユーフォニアム』の主人公も同じ遷移を辿っていた。

なんとは無しに続けていた吹奏楽に本気で打ち込むことによって、負けたことを悔しいと感じるようになる。

過去作での作劇が行かされた語り口と言えるだろう。

心機一転、スクールアイドルを再開。

部室に、自分たちが最下位で1票ももらえなかったランキングを張り出す。

しかし、顔はやる気に満ちている。

まさに臥薪嘗胆。前シリーズまでの温たい空気はどこへやら。

たった一話でスポ根ものの風格がある。

かの偉人も言っていた。

「負けたことがある」というのがいつか大きな財産になる。

そしていつものエンディング曲も違って聞こえてくる。

悩みながら 笑われながら めげない負けない

泣いちゃうかもね でも いいのさ 明日が見えてきた

ようやくスタートラインに立てた喜びと決意が伝わってくるようだ。

もう脚本家の花田先生と呼んでもいいのではないだろうか。

lovelive_sun01_09
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