『ラブライブ!The School Idol Movie』前半 ニューヨークでの死神との邂逅。

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『ラブライブ!The School Idol Movie』海外編

2015・日

京極尚彦

IMDb 7.4

Rotten Tomatoes Not Available

あらすじ:アキバドームでの大会があるので海外へ行きます(?)

ヒット作だから、と浅はかな動機での鑑賞。

ザックリと感想を

もともとテレビシリーズにはそれほどはまることはなく、ラブライバーには程遠い精神状態でした。

とは言え、架空のアキバという狭い世界での話としては「これはこういうもの」として見れました。

しかし、劇場版では海外に飛び立つ。それによって、今まで架空のアキバでしか成立しなかった緩めの世界観が、全世界を侵食していくような狂気へと昇華していくさまに震えました。

緩いアニメがシュルレアリスム映画へと進化を遂げている

元から現実味のないお話ではあった。それでもテレビシリーズでは、舞台を限定することで、かろうじて作品内世界を形作っていた。

秋葉原周辺から外に出ないことで、ギリギリでの現実味を持って描いていた。

しかし、本作は、海外出張することにより、リアリティの根幹が崩れてしまう。

けいおん、では英語が喋れないと言った文言や、飛行機に乗っての一喜一憂など、普遍的な外国への渡航描写がいくつかあった。

本作では気づけば外国にいる。多少の会話や迷子になるといった場面はあるが、最低限の整合性も取れていないため、さらに現実味が崩れていく。

ライブシーン、夢幻の如く

何よりもすごいのが、タイムズ・スクエアで歌い踊っているライブシーンだ。

ライブハウスならまだしも、公共の場で、ゲリラ的に場所を決めている。しかも、おなじみの人払いで『アイ・アム・レジェンド』や『バニラ・スカイ』のような、人の消えた場所でメンバーだけが踊っているのだ。

ここは現実ではない。

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まとめると

リアリティがないのをここまで極めると、芸術的でさえある。

現実味のなさが、デヴィッド・リンチやテリー・ギリアム風味で面白くなってきた感じ。

しかし、ただ単に、雑で粗ばかりとも言えるので、手放しでは誉められない。

↓ネタバレ感想↓

幼い日の思ひ出が映される。
水たまりを飛び越えたいというホノカ。

一切の共感を呼ばないけども、それはテレビシリーズの時と同じ。

幅跳びで全国優勝できそうな飛距離を出していた。

そして、プレゼント・デイ

テレビシリーズ最終話で前振りがあったアキバドーム大会の報。

本作のお話は、ラブライブ大会運営が、アキバドーム開催を検討しているので、全大会優勝者であるμ’s に海外遠征をしてもらい、話題を呼びこんで、ドーム開催の布石を作ってほしいのだそうだ。

非常に呑み込み辛い。

単純に海外のフェスで招待されたとか単純な話しにすればいいものを、なぜか不要な目標を設定したがる。

しかも相変わらず目標は設定されるのに、達成条件を設定しない。

“海外で話題になる”

ぼんやりだ。

どうせ話題になるのは明白なので、お話としての面白みにはならない。

海外へ。

特に迷いもない。了解を取るべき両親も存在しないためスムースに渡航。

空港に集まるメンバー。飛行機を見てホノカが言う。

「いくんだね、あの空へ、見たこともない世界へ」

その後搭乗は省いて、着陸の様子も、飛行機が止まったところもなし。

いきなりタクシー乗り場。アームストロングでいえば、月への第一歩をまるまるカット。

飛行機が飛び立つ場面より、着陸する場面より、入国審査よりも、初タクシー乗り場が「見たこともない世界」のハイライトのようだ。

ウミ、リン、マキの三人が乗ったタクシーが別のホテルについてしまう。

朽ちかけた建物、背景エキストラが黒人なのでハーレム街に来てしまったようだ。

意図はわからないではない。

ウミが、初めての海外で怖い思いをして消極的になってしまうが、親切な人に出会い海外も悪くないと思い直す。

そんないい話がしたかったのかもしれない。

しかし、一切成功していない。

間違えたあと、本来のホテルにたどり着き、ウミはホノカを責める。

ホノカのメモが間違っていたから場所を間違えた。おかげで怖い思いをした。

マキがウミをなだめる。

「リンがホテルの名前を覚えていたし、戻ってこれてよかったとしよう」

じゃあなぜ向かう前に間違いに気づかない。

ウミを泣かせるためだけに、リンとマキの知性が犠牲になっている。

ハーレムに迷い込んだことを「一歩間違えば命はなかった」と怯える。

ウミは黒人に対して偏見があるのかもしれない。

ウミが海外が嫌いになったという問題を前ふりしておいて、この解決もひどい。

セントラルパークでジョギングしていると、地元民に声をかけられる。

ウミはそれほど英語が堪能ではないようで、ノゾミが通訳する。ニューヨークを楽しんでと言われわかれる。

「海外も悪くないかもしれませんね」

ちょろい。

おなじみのババ抜きシーン。

ウミは焦りが顔に出てしまうのでなかなか勝てない。

かわいらしい設定だが、それを見せるために負け続けなくてはならない。

その犠牲となるのは、コトリ。ワザと負ける選択肢は内容で延々と勝ち続けて、再戦の申し出にうんざりしている。留学問題の時同様、空気の読めない女だ。

そのほかのキャラも犠牲を出し続ける。

マキが新しい曲を作っているという前振りのためだけに、ノゾミは人のノートを盗み見る奴になる。

マキは作曲している理由について「自分の区切りとして一応ね」と説明になっていない説明をする。将来作曲家を目指す気概もないし、μ’s 続行を願っているとか秘めた気持ちがあるわけでもない。エンディングにそれっぽい曲を流したいという京極尚彦(か花田)の気持ちがあるばかりだ。

ハナヨとリンの仲睦まじい様子を映すための場面。

「遠くにきちゃったね」「さみしいの?」そう言って寄り添うふたり。

テレビシリーズからこっち、メンバーと一緒の場面しかないのに何言ってるんがこいつ。

このラブライブ世界に生きとし生けるものの8割は一緒に行動しているぞ。

ホノカの寝相の悪さをギャグにする場面。

ニコが一晩中 顔面パックをしている。水分が奪われるし、雑菌が繁殖するのでそんな長時間やるもんじゃない。

しかもカットがかわると素顔に戻っている。

雑、すべてが雑。

ライブをどこでやろうかと悩むメンバー。

開催直前でセッティングできるあたり、スクールアイドル連盟は、海外でも相当のコネクションがあるようだ。

もう日本のドーム大会なんて楽なもんじゃないですかね。

ニューヨークを回って結論が出る。

「この街ってアキバに似てるんだよ」

この時同意できた観客はいか程いただろうか。

移民の玄関口として多様な人種を受け入れてきた歴史のあるニューヨーク。

かたや秋葉原は、内部のコンテンツが変わろうとも、ディープな趣味の町として、スタイルを常に固辞し続けている町。

どのような共通点があるのか待ったくわからない。共感を生もうとしている発言に全く共感できないのも花田らしいフレーズだ。

無理やりこじつけて帰国後のアキバライブの前振りにしたのだろうが、違和感を底上げするばかり。

街を回っていると、突然の雨。

「さみしいな」「大丈夫」

雨に濡れるのも気にせず飛び出すリン。そして歌いだす。マキ、リン、ハナヨ

『雨に唄えば』みたいなシーンにしたいのはわかる。

しかし、支離滅裂な会話からいきなり始まり、しかもミュージカル映画とも知らないまま、初めての歌いだしが映画の中盤に差し掛かってのことなので面食らうばかり。

とくに性格上マキはそれを嫌がりそうなものだが、躊躇なく参加するところに狂気をかじる。

たとえミュージカルだとしても、歌に全く意味合いがない。

沈んだ気持ちを立て直すためでもないし、歌で何かを伝えようともしてこない。

歌ってるだけ。

歌い終わって満足したのかホテルに戻ることに。

ここから屈指の名シーン(デヴィッド・リンチ的な意味で)

ホノカはお約束を消化すべく、メンバーと別の列車に乗ってしまい迷子になる。

駅から出てみると、現世とはちがった様子になっている。

街中が幽鬼であふれていた。ゆらゆらと魂がない器がうごめくように歩いている。

黒沢清の映画で見たような幽霊がそこらじゅうに現れている。

歩行者を3Dモデルで処理しているのも、この魂の宿っていない違和感を表現するためと思われる。

その生気のない街を歩いていると歌声が聞こえてきた。

日本人の女性が、路上で歌を披露している。

その女性の歌声に聞き惚れるホノカ。

この女性シンガーの役どころに付いてはいろいろと考察されているようだ。

未来のホノカだとか的外れな説もあるようだが、それは間違いだ。

この死者のうごめく街並み。女性シンガー役が死神役で有名な声優がキャスティングされていることから見て、ホノカに死をもたらすために現れた死神とみて間違いない。

死神女性シンガーに道案内してもらい、メンバーと再会できたホノカ。

お礼を言おうと振り返ると死神はすでに消えていた。

死神女性シンガーの持ち物であるマイク一式をホノカが持ったままだ。しかし、メンバーたちは誰も見えなかったホノカ一人だったという。

超常的な存在であることが匂わされるが、なぜかマイクを置いていくという状況。民話のモチーフとしては、黄泉の国から物を持ち帰ってはならないはずだ。

のちにこのマイクが玉手箱のようにホノカに死をもたらすことになる予感を漂わせる。

メンバーとホノカの再開に際し、ホノカはウミに叱責される。

どれほど心配させたのかと責め立てる。しかも第一声でBGMさえ掻き消え、静まりかえる という演出つきなので、かなり真に迫る場面だ。

しかしながら、エリの一言「きょうは迷惑かけたけど、明日は私たちを引っ張って」の一言で終了。

シリアスの投げ込み方が本気なのに回収の仕方が雑。

相変わらず、贖罪も断罪もなしに一方的に許されるぬるま湯設計。やる気もないのになぜシリアスをぶち込むのかは、花田のみぞ知る。

そしてライブ本番。

どのような結論で、タイムズ・スクエアに決定したかはよくわからない。

幻想的なタイムズ・スクエアでのライブの途中に奇妙な映像がさしはさまれる。セントラルパークの芝生の上で歌っている様子がインサートされのだ。

カメラ替わりなど、カット変わりでもなく、いきなり背景だけが切り替わるのだ。まるで幻惑されるように、タイムズ・スクエア、セントラルパークが移り変わる。明滅かのようにチカチカと切り替わるので、観客に違和感を持たせるのが狙いのはずだ。

タイムズ・スクエアの煌びやかな様子と、空虚なセントラルパークがコントラストを強調している。

おそらく、現実には、彼女たちは、セントラルパークで踊っている。しかし彼女たちの思いは強く、創造の中ではタイムズ・スクエアの舞台に立っているのだ。

マッチの火のなかに幸せをみる少女のような、悲劇的ながらも幸福について考えさせられるシーンとなっている。

そしてメンバーは日本へ帰国する。

オーディエンスのリアクションもなく、ニューヨークをあとにする感慨もなく、いつのまにやら飛行機が日本に着陸している。

雑。

後半はこちら。

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