『異世界はスマートフォンとともに。』脚本家さえ自問自答する都合の良さ。

異世界転生モノについてのぐだぐだした話はまた別に語りたいものですが、

現代日本から異世界に行って活躍する。(ちやほやされる)話が量産される中、異世界のファンタジー界にスマートフォン持ち込んで活躍するという。浅はかな、開き直った、露悪的な作品がアニメ化されたということで、第一報からずっと見たいと思っていた作品がついに始まったので見てみました。

ぼんやりしたキャラデザ、放送開始直前なのに予告編にキャラクターの声が入っていないなど、かなりの事故が予想され、いろんな意味で期待を募らせていた。

しかし、下がりきったハードルは堅実に飛び越えるような穏やかな作品に仕上がっていました。

何より感動したのが、脚本の気遣いの仕方。かなりゆるみきった原作をしっかりと気をまわしつつアニメ化しているのがよくわかり非常に好感が持てる。

書籍版などは確認していないので、原作というのはネット投稿版を参考にしています。

まず、主人公が死亡し、神様と邂逅する場面。

神様の不手際によって死亡してしまい。そのお詫びに、異世界へ転移するときに手心を加えてやると言われる。

展開こそ全く同じだが、アニメでは何か所か修正がくわえられ、視聴者に気遣いをしているのがよくわかる。

まず神様のセリフ

原作では

「雷を落とした先に人がいるか確認を怠った。本当に申し訳ない。落雷で死ぬ人間もけっこういるが、今回のケースは予定外じゃった」

となっている。

落雷で死ぬ人も結構いると作者が事故言及しているあたりにゆるさがある。にもかかわらず、主人公が特別扱いされるので、この時点で、この作品を見続けるのを断念するひとも多いのではないだろうか。

そこをアニメ版では

「神雷を落とした先に人がいるか確認を怠った」

長々とした言い訳も点けず、雷を神雷と専門用語じみた言葉に変えるだけで、主人公の死がイレギュラーであったことに説得力を持たせている。

そして、主人公が、自分の死と神の申し出を受け入れる理由。

原作では、

しょんぼりとする神様。僕はいわゆるおじいちゃん子だったので、なんだかいたたまれない気持ちになる。

神様の見た目から、おじいちゃんを思い出して、心を開くような展開になっている。

アニメでは、人を許せる人間になれっておじいちゃんに言われたから、に変更されている。

文言の分量は変わらないものの、原作で提示された、おじいちゃんがいて、かれが好きだった。という要素に、おじいちゃんの人となりが多少プラスされ、好きなだけでなく人生観に影響されたことまでわかる。

こんな小さなアレンジで、主人公の人間味が段違いの厚みが生まれてくる。もちろんそれで魅力が生まれるような並の薄さではないので焼け石に水だが。

その後は、異世界に降り立った主人公が、恵まれた資質をもって“巻き込まれていく”定番の展開。(間違っても自分からの行動ではなく、運よく運の悪い場面に出くわす)

待ちの不良からうら若き娘をたすけて、惚れられたり、魔法の資質を見せつけたりする。

そんな中で、当然のように周囲は主人公を持ち上げ賛美するが、

「ズルしてるのに褒められてるみたいで気が引ける」

と言わせる。

こういった場面で、いい気になっていいのは、視聴者であって、登場人物ではない、ということがちゃんとわかっている。

このように原作にはない良心を感じるセリフが足されているところがアニメ版の魅力だ。

話変わって、主人公は、食堂の新しいメニューを考えてほしいと頼みごとをされる。(原作の章が変わるので、とってつけたように話が変わるのは仕方のないことである)

アイスクリームを提案し、作り方をスマホで検索。

大好評を得る。

本作のハイライトは本来ここになるはずだが、いかんせん魔法を使う場面のほうが、チート感強めだし、周囲のよいしょも強い。

アイス作りでも脚本の良心が垣間見える。

主人公が食材の一覧を伝えるとき、卵、砂糖といいながら、

「よかった食材は一緒なんだ」

というセリフが足されている。

作り手側が、この作品の脆弱さを重々承知しているため、要所要所で申し開きをしている。

大作映画などでも、ここぞという時に「間一髪だった」「運が良すぎる」「神様に感謝しないと」というようなご都合主義をマイルドにするセリフが放り込まれることがある。

反則すれすれの禁じ手だが、このアニメはそれが山ほど出てくる。

結局のところ、この作品単体でおもしろいなんてことはあり得ない。しかし、テンプレートが煮崩れしてきた小説家になろう界隈のことを知っていたらメタ的な楽しみ方はできる。

手に汗握ったり、魂が燃えたり、涙が頬を伝うことなんて断じてない。

だが、このクソつまらないアニメを見ることで、逆説的に面白さとは何か、ストレスフリーで視聴者の興味を引くことなどできるのか、そういった思考を促される作品だと、言えないこともないとは言及するにやぶさかではないと思えてしかたがなくもない。

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