『タイム・チェイサー』救う価値の無い父のためにタイムマシンを開発。

『タイム・チェイサー』

I’ll Follow You Down

2013・カナダ

リッチー・メータ

IMDb 6.1

Rotten Tomatoes 33%

不可

あらすじ:幼いころに失踪した父は、タイムトラベルしたのかも。

タイムトラベルものだからという理由だけでNetflixで鑑賞。

ザックリと感想を

タイムトラベルを題材にしたSFというよりは、失踪した父にとらわれて前に進めない壊れた家族の物語といったほうがいいと思います。

実際にタイムトラベル要素が生きてくるのは映画も終盤に入ってからなので、家族ドラマのほうがメイン。

しかしどちらも中途半端な印象。ドラマとしては、タイムトラベラルが発端だから現実の問題としては受け取りづらいし、タイムトラベルものとしてはドラマに時間を割かれすぎてて食い足りない映画でした。

喪失を抱えた家族

ドラマとしては、いいキャストがそろっているのでそこそこ盛り上がる。

特に導入部の幼少期の場面が素晴らしいので余韻で最後まで見ることができた。

しかし、大人になってのハーレイ・ジョエル・オスメントは正直、華がないので、ただの悩める好青年ではおさまりが悪い気がした。

なにより、ルーファス・シーウェルとは親子に見えない。

難しい上に穴の多いSF

タイムトラベルの設定は難あり。『バタフライ・エフェクト』や『アバウト・タイム』のような不思議な力ではなく、機械によるタイムトラベル。つまりはタイムマシンを作るわけだが、大学の研究室の一角で一人乗りのタイムマシンを作る。相対性原理や量子力学についてあれこれと講釈があるけど納得度は低い。

しかも物語の構造上、このタイムマシン理論を完成させるのが主軸となるのに、それが専門的な用語だけで説明されるので、タイムマシンが完成したところでなのカタルシスも生まれない。

またストーリーの流れも難しい。高尚な難解さではなく、散らかっていてよくわからないといった種類のものなので考察しがいがないぼんやりしたお話。

動機の弱さ

『バタフライ・エフェクト』ではヒロインの幸せを願うという通底した動機があった。

しかし本作の場合は、主人公は父親の失踪を受け止めていて、今の人生をしっかりと歩んでいて恋人との結婚も考えている。父親の失踪にとらわれているのは、母親と祖父の方だ。

つまりまったくもって主人公にとっては、過去を変える必要がない。もっといえば、このままの人生の方が主人公にとってはいいものとなっている。さらには劇中でもたびたびそのように言及されている。

にもかかわらず映画はタイムマシン開発へ向かって進んでいくので、観客としては徐々に話の筋を見失っていく。

そもそも父親の方の失踪の動機もわかりにくいので、あんな奴は捨て置けと思ってしまった。

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まとめると

タイムトラベルものではなく、タイムトラベルするためのあれこれの話なのでジャンルとしての面白みはない。

ドラマとしても「タイムトラベルすべきか否か」という葛藤に重点を置いているが、結局は映画として、求められてしまっている悲しいさがで、どうせタイムをチェイサーするんだからと、どうでもよくなってしまうった。

↓ネタバレ感想↓

映画は父を殺すためにある―通過儀礼という見方 (ちくま文庫)
島田 裕巳
筑摩書房
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導入部は素晴らしい。

主人公のエロルの少年時代から始まる。

エロルと父(ルーファス・シーウェル)はチェスをしている。しかし、父は出張に行かなくてはならない。ゲームを中断し、盤面をそのままにして父は出かけて行った。

父親の残滓をそのまま小道具化できている素晴らしい設定だ。

エロルのほうは、学校へ向かうバスに乗る。隣には、友達の女の子グレイスが座っている。

宇宙船のような粒子加速器のオモチャを見せて楽しそうに会話する。

個人的に名シーン。

エロルは持ってきたブラウニーを一緒に食べようとすすめるが、グレイスは「乳糖不耐症だから食べられない」といった。それを聞いたエロルは、後ろの席に座っていた別の子にブラウニーをあげてしまう。

グレイスが「食べればいいのに」と言うと

「一緒じゃないと」とエロルは気にも留めない様子。

ささいな場面だが、食べ物に対して自分が食べるのではなく、相手が食べられないことを気遣い、相手と一緒に食べることを優先させるというのは大人でもできない気配りだと思う。

この場面があるから主人公に好感が持てるし、今後の二人の関係に説得力が生まれる。

とは言え他にいいシーンもあまりない。

父は物理学の教授で、学会へ出席しに行ったのだ。

しかし、帰宅するはずの予定日にまだ帰らない。不審に思い、宿泊先ホテルに電話すると、荷物を残して忽然と消えていたことがわかる。

そして時間が流れて現在。

結局、父は戻ることなく12年の時が過ぎた。成長したエロル(ハーレイ・ジョエル・オスメント)は大学に通い、教授である祖父(ヴィクター・ガーバー)を超えるほどの頭脳を持っいる。

グレイス(Susanna Fournier)とは結婚も考えるような仲になっていた。

完璧な人生とはいえないものの、父が失踪したあと精神的に立ち直っているように見える。

エロルの母は、父が失踪したことをいまだに引きずっていて、何度か自殺未遂を起こし、向精神薬で治療している。

大学にあった古い機材を調べてみると、父が研究に使用していたものだと分かる。しかし、それは1940年頃から大学にあったもの。

調べてみると、過去に、父親そっくりの人物が、身元身元不明の遺体として発見されたという新聞記事を見つけ出す。

父はタイムトラベルし過去に言ったまま殺されていたのだ。

遺品の時計に見覚えがあるのはいいとしても、何故か新聞に乗っている写真は倒れている背中の写真。そこは顔を映してくれたほうが、確信があっていいはずなのに。

父はタイムトラベルしたという根拠がぼんやりしているところも主人公の葛藤への共感の足かせとなる。

祖父は、エロルに研究を引き継いで、タイムマシンを再現しようと持ちかける。過去に戻って、連れ戻せば、あるべき歴史に修正されるというのだ。

量子力学や相対性理論がどうのと言う割に、ファンタジックなタイムトラベルにありがちな目標設定。

エロルは、グレイスとの関係もある今の生活が気に入っていた。祖父の誘いを断る。

どうやら父親の疾走があって落ち込んでいたエロルをグレイスが励ましたことが馴れ初めらしい。

グレイスが言うには「お父さんの失踪がなければ私に関心を保たなかったはず」

モッサリしたオスメントと美人の彼女ではバランスが取れていない。なのに、なぜだか彼女のほうが格下みたいな設定なのだろうか。(ネームバリューか)

さらに言うと、父親の失踪が発覚する前に二人の交流が描かれているので、ここの流れに共感するのはかなり難しい。少年時代に共感していたら、なおのこと理解できない。

母は、向精神薬を大量服用し自殺してしまう。

エロルは葬儀を済ませた後、祖父とともにタイムマシンを開発する決意をする。

タイムマシンの完成が目前となったとき、グレイスの妊娠が発覚する。

グレイスは、過去を変えても同じように、二人が一緒になれる保証はない、タイムトラベルはしないでほしいと懇願する。

ここでの葛藤も、過去がより良く修正されるというお気楽設定とマッチしてない。

エロルは、父のことを引きずっていては自分もちゃんとした父親になれないからとグレイスを説得する。

一見筋が通っているようでいて、矛盾している。

今回は、父を連れ戻して母親の死をなかったコトにするために過去に戻るはずだ。何より序盤では父親の失踪から立ち直っていたのにその物言いはおかしい。

タイムマシンのテストがうまくいかない。エロルは、地球儀を見て地軸の傾きを計算に入れていないことに気づいた。

主人公が何かに気が付いたぞ!

何かは全然わからないけどタイムマシンができそうだ!

しかもドラマとは別のところに配置された課題なのでクリアしてもまったくカタルシスない。しかもテキトーに置かれた地球儀を見てよくわからない理屈で納得度が低いためイラッとする。

エロルは、タイムマシンを完成させ過去に向かう。

父を見つけ、未来に戻るように諭す。

父は聞き入れたが、すぐに戻る気はないようだ「やるべきことがある、アインシュタインに会いに行かないと」

原爆に関することでアインシュタインに言いたいことがあるようだが、ぱろめーたーがどうのとかセリフがよくわからないのでなにがしたいのか意味不明だ。

やっぱりこんなやつは放っておくべきだった。

エロルは最後の手段を考えていた。

「喪失を味わうべきなんだ」そう言って銃を取り出すと頭を撃ち抜いた。

それを見た父は、自らの過ちを痛感し、タイムマシンで現代に戻る。

こんな父親なら過去に放置しておくべきだった。

むしろ、父親の浮気でも捏造して母親を立ち直らせたほうが良かったのではないか。

母がもう少しだけ生きながらえていたらなら、孫も出来て生きる理由も出来ただろうに。この父親はまた何かやらかすぞ絶対。

実際息子を失う経験をしたようでいて、もっさりした別人みたいなハーレイが目の前で自殺しただけだからそこまで身につまされることでもないでしょう。

それと、小さい頃に持っていたオモチャは実は未来のエロルが持ってきたものだったみたいなシーンがあるけど、すこぶるどうでもいい。

そのオモチャがなければ知り合いにならなかったみたいな前振りは出来ていない。ブラウニーのやり取りがいいと思っていただけに、ずっこける思い。

いい場面があっても結局は、矛盾によっていいシーンではなくなる。つまりはいいシーンなんてなかった。