『サイレンス』それって、傍目には喋らないだけじゃね?

hush

『サイレンス』

Hush
2016・米

マイク・フラナガン

IMDb  6.7

Rotten Tomatoes  100%

不可

あらすじ:殺されそう。

幼いころの病で耳が聞こえなくなった女性が主人公。
声が出せないこともないが、自分の声も聞こえないので話さない聾唖者だ。
外界との接触を断ち、コテージで小説の執筆をしている。

そこに連続殺人鬼が現れ、外部と連絡が取れない状況に。彼女は助かるのか。

脚本は監督と主演のケイト・シーゲルが共同執筆。外からアイディアを入れないせいか風通しの悪い作品になっている。
キャビンと殺人鬼とサイレンス、新しい味付けのようだが、なるほど誰も試さなかったのは、とくに面白味もでないからか。
全編通して、アイディアに乏しい。
導入部こそ、耳が聞こえないために殺人鬼に携帯電話を奪われて助けが呼べなくなるという必然性がある。
しかし、そのあとはまったく関係ない。いたってフツーのスラッシャームービー。堅実に作ってはいるものの、アイディアが光っているんだろうなというハードルをまったく超えてこないのがむなしい。

音が聞こえないというのも、共感しづらい。
序盤に環境音がフェードアウト→フェードインするだけであとは普通の映画が始まる。
時たま主人公の耳をクローズアップするので、聞こえてませんよーアピールはあるもの。実際はBGMも環境音も鳴りっぱなしなのでどうにも歩み寄れない。

もしかして、聾者に対しての想像力の欠如を啓蒙しているのか。

↓ネタバレ感想↓

主人公マディはコテージにこもって小説を書いている。たまに隣人が訪ねてくるだけで、いまは彼氏もいない孤独な生活だ。

一人でコテージにいる時点で『スピットオンユアグレイヴ』されてしまいそう。猫を飼っているのもお約束をおさえている感じ。

ただ、映画馴れし過ぎなせいか、伏線の張り方が大雑把で伏せていない感じがした。
料理を焦がして火災報知機が鳴る。
聾者用の特別製で、強い光と振動を感じるほどの大音量がでるようだ。

あとでつかうんだろうなー

作家の特性として、いろいろな物事のパターンの考えが湧き出てくるという。ああやればこうなるといった試行錯誤が脳内で溢れてくるのだそうだ。

非常にわかりやすい前フリ。

夜になるとスラッシャータイムが始まる。

隣に住んでいる女性が助けを求めて走ってくる。しかし、窓をたたくがマディには聞こえない。必死に助けを斯うが時すでに時間切れ、マスクをつけた殺人鬼に刺殺される。

聞こえないのは仕方がない。しかし、この前段階で、、耳が聞こえないことがどれほど不便なのかを観客に共感させないと、傍から見たら鈍感な人に見える。
マディー、 うしろっ! うしろー!といった感じ。

殺人者はマディが気づかないのを不思議に思いながら窓をたたく、やがて耳が聞こえないことをしり興味を持ち始めた。
死角から侵入し、マディの携帯電話を盗む。

マディは何者かが近くにおり、隣人を殺したことに気付く。
機転を利かし窓にメッセージを書く。
顔も見ていない誰にも言わないので立ち去って。

このメッセージを読んだマスクの男とマディはドア越しに対峙する。
そして男はマスクをとって、素顔を見せるのだ!
「これで見ただろ」男の唇を読んで戦慄するマディ!

このためだけのマスクだとげんなりする観客!

快楽殺人者のくせして、顔をかくして、どうせ目撃者も殺すつもりだろうになぜマスクをかぶっているかというと、これがやりたかったのだろう。

顔を見せて脅かしてくるわりに一向に中に踏み入ろうとはしない男。
「ただ殺さない、死にたくなるまで恐怖をあたえてからだ」

要約すると、まだ尺が余ってるんだよ。

そこからグダグダと攻防が繰り返される。

よかったところもなくはない。

殺した隣人の死体を操り人形のようにもてあそぶ場面だ。マディに絶望感を与えるのに成功しているが、先の理由が理由だけにビミョー
でも、死体遊びは『クリミナル・マインド』『フルメタル・パニック』とかで見たけど打ち震えるものがある。

あきらめかけたマディが、猫を殺されかけて反撃にでるのもベタだけど燃える。

しかし反撃のしかたがこれまたげんなり。

小説家としての発想力、頭の中でトライ・アンド・エラーを繰り返し、最適解を出すのかと思いきや
そんなことはない。
逃げてもだめだから反撃しよう。と結論を出すのだ。
反撃方法を編み出したりはしない。
ここでもハードルを華麗に潜り抜けていく。

唯一、耳が聞こえない設定がフィーチャーされる場面。

犯人が後ろから忍びよると、マディは音は聞こえなくても髪にかかった吐息で気付くのだ。

べつに誰だって気付くけどね。
盲人が暗闇で活躍するとかでもないし。

反撃し、攻守逆転。

そして、伏せてない伏線、火災報知器の出番。
これも考えてのことではなくとっさに手を取って作動させる。
しょぼい音と光にひるむ殺人鬼。
おそらく、しょぼいのは観客に負担をかけないように小さめの大きな音にしているのだろうが、肩透かし感は否めない。
とどめも、その辺にあったコルクスクリュー。
景気のいい血しぶきだったけど、もう少し前ふりなり意味合いがほしかった。

邦題はわかりやすくなっているけど含みが減ってしまっている。
原題は静かにさせるとか黙らせるの意。喋れない彼女が殺人鬼のほうを黙らせるというなかなか気の利いたタイトルだ。

耳が聞こえないなんて設定なんだからいろいろな工夫をしているに違いないと不要にハードルを上げて見てしまった。
トマトメーター100%なんて『市民ケーン』以上の傑作なはずだけどね。(レビュー数は13だけだけども)

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