『最後の追跡』貧困という病を遺伝させないために。

Hell_or_HighWater

『最後の追跡』

Hell or High Water

2016・米

デヴィッド・マッケンジー

IMDb 7.9

Rotten Tomatoes 98%

あらすじ:強盗と、それを追う保安官。

高トマトメーターにつられてNetflixで鑑賞。

ザックリと感想を

話は非常にシンプルです。

テキサスの田舎を舞台に、強盗に及ぶ兄弟と、それを追う保安官(正確にはテキサスレンジャー)の話。

テキサスの荒野に合ったドライな語り口で、スピーディーに話が運んでいく。そのなかで、要所要所に現代的な問題を交えたテーマが垣間見えてくるのが素晴らしいです。

何より、他愛もないセリフの端々に見える人間性に唸らされる。まったく説明がないのに、テキサスの抱える現状、主人公兄弟の追い詰められている現状、各々の考えがひしひしと伝わってくる。

緻密な脚本と秀逸な演技。

まさに、今描くべき、見るべき西部劇でした。

タイトルの意味

邦題の『最後の追跡』は、定年間近の保安官の目線での命名だろう。

ただやっぱり原題の方が含意が深い。

hell or high water

意味としては、たとえ火の中水の中。強盗にまで及んだ兄弟の心境。それを追いかける保安官の信念を表した題。

さらには別の意味がある。銀行との契約の中での言い回し、

hell or high water clause

その名の通り、いかなるトラブルがあろうとも、契約の解除も減額もできない。 何があっても返済、もしくは最終的に差押えまでしてくる。

世界金融危機により、地価が下落しようとも、銀行にとっては関係ない。何があろうとも“回収”しようとしてくる。

リバースモーゲージ

兄弟の事情の中で見えてくる金融危機の影響。

母親が年金支給を受けていて土地を奪われそうになったことに端を発している。

リバースモーゲージは、土地、自宅を担保に銀行から年金を受け取る融資形態。

死亡後に担保物件を売却して返済する。

簡単に言うと、死ぬ前に住み家を前もって売っておく契約だ。

融資分と、地価が下落した分を返済しないと家が奪われてしまう。

貧困の中、金のあてはなく、hell or high water clause の状態に陥り。強盗に踏み切る。

ある種の意趣返しと言える。

現代西部劇

強盗と、銃、保安官、馬の代わりの車。

スリリングな現代版の西部劇。

逃走シーンの流れるようなカメラワークや、遠大なテキサスの荒野の空撮など撮影も素晴らしい。

テキサスが舞台なので正確には西部ではない。

しかし、本来の西部劇とは、「ゴー・ウェスト」開拓の精神を描いた物語。

本作では、奪われた土地を守ることでフロンティアスピリットを体現している。

先住民から土地を奪い、銀行に奪われそうになり、それを守る。負の連鎖の中で、せめて自分の子供には貧しさを遺さないようにという苦いドラマだ。

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まとめると

銀行強盗と、追いかける保安官。その単純な構図でまず楽しませてくれるし、かなり難しい要素が自然に理解できる。

用語を聞き流しても、兄弟の心情には感情移入できた。

物語、撮影、演技

すべてが素晴らしいとしか言いようがない。