『ゲットハード』生き残る方法は二つ。強くなるか、しゃぶるかだ。

『ゲットハード』
Get Hard
2015・米 イータン・コーエン
IMDb 6.1
Rotten Tomatoes 29%

あらすじ:刑務所に入る前に、黒人に生き残り方を習おう。

『26世紀青年 Idiocracy』の脚本をマイク・ジャッジと一緒に担当したイータン・コーエン
本作も、下ネタ(特にゲイネタ)人種ネタがひどい(素晴らしい)

まっとうに生きてきたケヴィン・ハートに肌の色だけでムショ暮らしの経験があるに違いないと勘違いした、ウィル・フェレルが生き残るすべを教わる。

導入部からして偏見に満ちているが、ケヴィンのほうも報酬に目がくらんで、経験豊富なふりをするのでお互い様といったところ。

さらには、二人の関係が友情に変化していくドラマ要素も堅実で安心してみることができた。

ただ、ゲイネタが今までみたコメディの中でいちばん下劣(素晴らしい)もしかしたら嫌悪感を抱く人もいるかもしれない。
具体的にはネタバレの冒頭で。

↓ネタバレ感想↓

ゲイネタハイライト
ウィルがムショでは生き残れないとあきらめたケヴィンは、強いものに奉仕するしかないと言い出す。
そして、実際に男を誘ってレストランのトイレで、口での奉仕に挑戦するという展開。
そこまではっきりとモノは映らないが、終始吐き気をうったえるウィルの表情が秀逸だ。

導入部の動機付けはひどい(素晴らしい)ジョークを交えてスムースに描かれていた。

ウィルは完ぺきな人生を歩んでいる証券マン。社長の娘との結婚も控え順風満帆だったが、いきなり詐欺横領の容疑で逮捕される。
あらすじを見て、詐欺を働いた証券マンに感情移入できるかと不安に思った。
けど心配ご無用。社長の罠で、冤罪にかけられただけだ。
冤罪被害者というだけで簡単に同情できるうえに、冤罪を晴らすサブプロットも使える非常に優秀な設定だと思う。

ケヴィンのほうは、地下駐車場の片隅で洗車場を営んでいる。社長ではあるものの、独立した店舗をもつ構想や、子供を安全な学区へ移せる新居のためにはお金が足りない。

ウィルはケヴィンの洗車場の客だがそれほど親しくはない。
黒人の3人に1人が刑務所経験があるという統計を理由に、収監まであいだ。刑務所のイロハを教えてほしいと頼み込む。

突拍子もないコメディシチュエーションに自然に持っていけてるのがうまい。刑務所に過剰におびえて泣きじゃくるウィルも面白いし、ケヴィンが犯罪者扱いされたのに怒って、ムショの恐ろしさを話して脅かし、そのせいで経験豊富だとさらに勘違いさせ、教えを乞う。ところどころのパンチラインをねじ込みながら無理な会話を綺麗に成立させていて感動した。

そこから実際に服役するまでのひと月、ウィルは生き残るため、ケヴィンは金をもらうために、刑務所特訓が始まる。

自宅を刑務所のように改築したり、電話は順番待ちせいにしたりして環境づくりも万全。
しかし、肉体改造や喧嘩指南が全くすすまない。
いくらなんでもヘたれすぎるウィルにあきらめを感じ、ケヴィンはプランBを提案する。
「しゃぶるしかない」
強い奴にご奉仕して生き残る作戦だ。

刑務所ものを見ているとそういった要素も想像できるが、実際に練習する場面があるとは思いもよらなかった。
さらに、ウィルが特訓しにトイレにいっている。間に二人の会話を聞いてゲイだと勘違いした男がケヴィンをナンパしにくる。

ここでも、ゲイいじりで笑いをとる。ここまで笑いのネタにしておいて、後々、このナンパしてきたゲイと恋愛相談の電話をするくらい仲良くなっているのも笑えたし、うまいフォローになっていて、バランス感覚の高さも感じられた。

しゃぶるのは無理と結論がでたので、やはりハードになる(強くなる)もとのプランに本腰を入れる。
どぎついゲイ下ネタがしっかりと物語上の動機の強化になるのがうまいし笑える。
「チンポへの恐怖心が身を鍛える」
と謎の格言にも大爆笑。

事前にムショ内のコネクションを作っておこうとギャングに接近する。
ケヴィンのいとこの黒人ギャングの仲間になろうとするが、もちろん相手にされない。だが、ウィルの投資知識で一目置かれることになる。

ギャングと金融知識のギャップが面白い。ヤクの売りさばき方を工夫するとか、株式投資の話とか、この設定があとあとまで生きていて、ギャング同士の口汚い喧嘩なのにインテリなワードが混ざるのはかなり笑えた。

黒人ギャングに入るのはあきらめ、白人のバイカーギャングに接触を試みる。

なぜ最初からそうしないのか、という突っ込みも面白いギャグがはいればOK。
ケヴィンのアドバイスでは白人ナチ野郎たちの前でNワードを言えばすぐに仲間になれるとのこと。
しかしケヴィンとの友情を感じ始めていたウィルはどうしてもNワードが言えずリンチされかける。ウィル・フェレル自身がユダヤ人のためユダヤジョークもはさまれる。

みかねたケヴィンは決死の覚悟で助けに入る。
ここでの啖呵がほかの映画でも通用するレベルの名台詞。
「I Have a Dreamでググってみやがれ!」
偏狭な白人至上主義者全員にググってほしいものだ。

その後、真の黒幕である社長を追い詰めることに成功し冤罪が晴れることに。しかしギャングにもらった銃の違法所持で、結局半年だけ服役することになる。もちろんムショでの振る舞いは完ぺき。

前科がつくのはどうかと思うけど、実際に習ったことが活かされる展開はいい。映画の大半が刑務所での指南だから、何もなしで終わると虚しかったかもしれないし。

出所したウィルはケヴィンの洗車場に投資し、めでたしめでたし。

最後のセリフもタイトルに絡めたひどい(素晴らしい)
「生き残るために君にハードにしてもらった。萎えそうな時もあったけど、君のことを思い出してまたハードになれた」

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