『フローズン・グラウンド』飲まない打たない買わない汚職しない。キレイなニコラス刑事。

『フローズン・グラウンド』

The Frozen Ground

2013・米

スコット・ウォーカー

IMDb 6.4

Rotten Tomatoes 61%

ニコラス・ケイジ

あらすじ:保護された女性。監禁していたのは連続殺人犯の可能性が。

ザックリと感想を

凄惨な実際の連続殺人を元にしていはいますが、

一番の疑問はなぜ映画化したか。

どんな映画にしたかったのか。

犯人の異常性か

刑事の奮闘か

両者の関係性か

被害者たちか

どれも等分だし、かといって緻密でもない。

どう汲み取ろうとも、ひっかかる部分がないため何も心に残りませんでした。

凍てつく街、アラスカ州アンカレッジ

印象に残ったのは、舞台となるアラスカ州アンカレッジ。

吹雪が吹き荒れる雪国、そこに、ストリップクラブが並び、路上には娼婦たちが立っている。LAでもマイアミでもなく、アラスカの裏の顔というのはあまり見かけないため新鮮に思えた。

でも雰囲気はいいけど、『フローズン・リバー』のように、その土地でないと描けないものは感じなかった。

ニック 対 ジョン・キューザック

今回のニックは実直な刑事役、麻薬もやらないし汚職もしない。かといってセルピコみたいな病的な正義漢でもない。

ただ実直なだけだ。

アクの無いニコラス・ケイジなんて誰が見たいんだろう。

犯人役のジョン・キューザックは、雰囲気だけで言いようのない気持ち悪さを発揮していて素晴らしい。普通の振る舞い立ち姿にヌメッとした不快感を纏っている。

でも本来は、一見、人殺しには見えないって役どころのはず。ここも映画のぼんやり加減につながっている。

とはいえ、それぞれ頑張っているだけだし、何より二人で対峙する場面が少ないので、共演しているメリットはあまりない。

『ブレイキング・バッド』以降のディーン・ノリスが出演。それほどパッとした役回りはない。

ヴァネッサ・ハジェンズ 、女優未満(に見えてしまう演出)

娼婦でストリッパーの役にヴァネッサ・ハジェンズ。存じ上げないがアイドル歌手らしい。彼女がストリップをする場面があるが、ブラを外すそぶりが全くない。にもかかわらずショーツにはチップがわんさか挟まれている。トップも見せずに稼げるとは大したもの。

別にヴァネッサのふくらみが見れなくて怒っているのではない。

脱がせられない女優をストリッパーにキャスティングするなと憤っているのだ。

千歩譲って、そんな配役になってしまった場合は、ストリップの場面なんて入れなければすむ話だ。

たかだか1シーンの話だが、この場面だけで、その程度の映画なのだとわかる。

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まとめると

いい舞台、いい役者がそろっているのに、この体たらく。

脚本の時点なのか、演出の手腕なのか、

実際の事件を脚色しているのに、それが映画としての方向性を示したりはしない。

ぼんやりしてた、それしか残らない。

↓ネタバレ感想↓

1983年、アラスカ州アンカレッジの保安官が一人の娼婦シンディ(ヴァネッサ・ハジェンズ)を保護する。彼女は手錠をされ傷だらけだ。

ロバート・ハンセン(ジョン・キューザック)という男に監禁され強姦されたという。

証拠もなく、ハンセンは善良な市民だから手は出せないと娼婦を返してしまう。

しかし、保安官の一人が不満に思い、州警察に上申。

一方、州警察ではジャック(ニコラス・ケイジ)が次々と発見される変死体の捜査にあたっていた。

ここで、犯人、被害者、警察、役者がそろった時点で、本作がミステリーではないことがわかる。

犯人は、ハンセン=ジョン・キューザックだし、被害者は狂言ではない。ジャック=ニコラス・ケイジが捜査している変死体は、ハンセンが埋めたもの。

謎は一切ない。あとはどのように証拠を集めて立件するかだけだ。

にもかかわらず、立件までの筋立てスマートに見せてはいない。

ハンセンはまじめに暮らしているとはいえ、前科がゴロゴロ(強姦、拉致誘拐、強盗、放火、)とあるし、ジョン・キューザックの演技はあからさまに気持ち悪い。

善良な市民(と思われてる)なだけで権力を持っているわけでもない。

もちろん実話だし、検察は裁判で無罪が出るのを恐れるのはわかる。

しかしこの映画内での説得力は何一つない。

ジャックは警察を辞め、石油会社への転職を予定していた。しかし、シンディの記録に変死体との関連をみて、引退を先延ばしにする。

わざわざ描写するわりに活きてこない設定。警察機関への不信があるでもなし、収入のための転職だ。

引退先延ばしで生じる夫婦のわだかまりも自動的に鎮火する。なにを描くために入れ込んだか全くわからない。

変死体は、背中に複数の銃創があるため、マンハントの餌食にされた可能性がある。

シンディが監禁されていた部屋には、毛皮や剥製があり犯人がハンターであるという共通点がある。ますます、ハンセンが関与している可能性が濃厚に。

いくら推理を進めようとも話は進まない。

導入部ですでに、真犯人は確約されているのでしっかりとした証拠が出るまで退屈な場面が続く。

ハンセンの猟奇性の描写も、予想通りのマンハントのシーンがあるだけで目を引く場面ではない。

見どころは、いつもはフツーの人代表みたいな役どころのジョン・キューザックが、ここぞとばかりにサイコパスを演じてみせる死んだ目くらい。でも終始死んだ目なので劇中でのインパクトはない。

実話の部分で一番興味深い要素が採用されていなかった。

ハンセンが一連のマンハントのことを「サマータイム・プロジェクト」と名付けていたことや、新聞広告にロマンチックな文句を掲載して女性を誘っていたり、飛行機と別荘につられて、女性たちは最初は喜んで着いてきていたことなど、

ハンセンの人物描写が完全に現実に負けている。

ジャックは行方不明者の姉に話を聞く。

彼女は、妹はすでに死んでいるかも、せめてちゃんと埋葬したい。

そういって、姉妹で付けていたお揃いのブレスレットをジャックに渡す。

シンディは、裁判での証言を断り、町を離れようとする。

ジャックが説得し、証言を取りつけ、家宅捜索のチャンスを得る。

しかし、ハンセンは証拠をすでに捨てていた。

ジャックはシンディを自宅に匿い、ほかの証拠さがしに奔走。

シンディが町をうろつく場面で、なぜか路上にデカイカリブーが闊歩している。それを見てぼんやりするシンディ。
特に意味はない。

デヴィッド・リンチあこがれでもあるのか、不可解なシーンが入る。

しかし、この1シーンだけなので、本当に不可解だ、頑張って不可解な映画にする気概も感じられない。ただぼんやりを底上げする効果しかない。

ジャックが引退を先延ばしすることに、妻がしびれを切らす。

夫婦喧嘩になり、それを聞いたシンディは出て行ってしまう。

事件の本筋と一切関係のない盛り上がり展開、しかも盛り上がらない。

家宅捜索を乗り切ったハンセンはシンディをなんとかしようと、チンピラ雇ってさらわせることにする。

一方ジャックと妻は和解。

一切の理由もなく、あなたは頑張ってるわ、とか言って抱き合う。

念入りに家宅捜索を続けた結果、隠しスペースに犯行に使われた銃を発見。

最初のガサ入れで見つけておきなさいよ。

最初に見つからなかった理由も、今回見つかった理由もない。

しかし検察は「他の人間が撃った可能性がある」と二の足を踏む。

検察なのにこの発言、O・J・シンプソンの弁護士みたいなもの言いだ。

結局証拠がないまま、シンディの証言を根拠に、ハンセンの尋問を始める。

自白が唯一の活路だ。

ハンセンが警察署にいるあいだ、雇ったチンピラはシンディを見つけさらう。

雇い主が尋問中になに律儀に仕事してるんだこつは、報酬もらえるかも怪しいだろうに。バカなんじゃないのか。

もしかしたら、こいつに依頼した誘拐で立件することになるのか。

とおもったらそんなことはなかった。

シンディを救出、チンピラは逃走。

このチンピラは以降登場することはない。こいつが映るシーンはすべて必要がない。

さらにハンセンの持ち物をあさると、死体を埋めた場所を記した地図が出てくる。

それを突き付け、さらに被害者の姉から受け取ったブレスレッドを、掘り起こしたとブラフをかますとあっさり自白した。

ブレスレットは唯一伏線らしい伏線だが、地図が出てきたので全く必要がない。

チンピラのすったもんだといい、無理やり“映画”にしようとして、映画として不細工になっている。

ハンセンは自白よる減刑をふくめ仮釈放なしの懲役400年以上の判決になる。

アラスカ州に死刑制度はない。

エンディングでは、犠牲者たちの写真と行方不明の日時、死体確認の有無がテロップで表示され、犠牲者たち(発見されないものも含めて)に捧ぐ、としめられる。

ポップな音楽も相まって、不謹慎を超えたおぞましさを感じた。

実際の事件がベースとはいえ、どこか現実とは分けて見てしまうものだ。実際の写真を見せられてもどう受け取っていいかわからない。

しかもそれほど重みのある作劇でもないのに、無駄な不意打ちを食らってしまった。

今回のニコラスハイライトは、証拠を捨てられ、呆然とアラスカの大地に立ちすくむニック。

凍てついたアラスカの大地を見つめるニックはいい画に見えるけど、お話上の意味はない。ただただニックの顔ニュアンス力に頼ってるだけだ。