『ウォールストリート・ダウン』ウォール街の(だぶん)ダニども(不確かかもだが)全員 死刑に処す!

『ウォールストリート・ダウン』

Assault on Wall Street

2013・加・米 ウーヴェ・ボル

IMDb 6.1

Rotten Tomatoes 25%

不可

あらすじ:世界金融危機の影響で、不良債権を売りつけられ資産を失い、妻が自殺。ウォール街へ乗り込む。

金融業界リベンジものときいて、Netflixで鑑賞

ザックリと感想を

テンポが悪い。

あらすじをどんなに短くしても、妻の自殺まで書かないと話がつかめないため、脚本に難ありだと思います。

たとえば、元海兵隊の男がウォール街に乗り込んで、その動機が実は妻の死だった。

ならまだしも、

妙に順序立てよく、妻の治療が思わしくないところから始まり、金銭的に困って、投資、失敗、自殺と描かれるので、非常にテンポが悪いです。

さらには、復讐の標的となるウォール街の描き方が雑。リベンジを果たしてもカタルシスはありませんでした。

まだ、ウォールストリートはダウンしないのか

タイトルを見た時点で、観客はダウン待ちアサルト待ちなのだから、そこを早めに済ましてしまったほうがスマートだろうに。

時系列通りにやるせいで、いきなり重火器を持ち出すあたりが突拍子もなく見えてしまう。

むしろ、アサルトするまでの描写のほうが丁寧で、ドラマのほうに主軸を持って行ったほうがよかった。

最終的な襲撃も、拳銃一本で乗り込むほうが悲哀がこもってよくなったはず。

頭の悪いアクションばっか撮っているボル監督としては、ドンパチ入れないと不安だったのだろうか。

結果として、『ジョンQ』のような悲痛なものにもならないし、『イコライザー』のような爽快感もない。

題材にどのように向き合いたいのかまるで伝わってこない。

殺しの安心保証

こういった自警団モノは、悪役を殺しても爽快感しか生まないように舞台建てを整えるべきだが、本作は、金融犯罪が相手だ。

妻も自殺なため実質的に手を下した犯人がいない。

そのためにはしっかりと悪役と妻の死を結びつけるべきだが全くうまくいっていない。

一番の敵役の証券会社社長との関連は薄いし、関連の濃い下っ端社員は殺していいほど憎く描かれてはいない。

殺しの安心保証がついていない。

『ペントハウス』みたいにクズ金持ちから金を奪うなら安心して見られるが、本作は殺しまで行くのに、爽快感は保証されていない。

スポンサーリンク

まとめると

見終わってから監督脚本がウーヴェ・ボルだと知った。 ロッテントマトで30%を超えたことのない監督。

ある程度の面白さが保証されているはずのゾンビ映画でも4%をたたき出すその手腕。

名前に気が付いていたら見なかった。

↓ネタバレ感想↓

2008年、リーマンショックのあおりを受けウォール街の証券会社では不良債権を一刻も早く売りさばこうとしていた。

この場面からして主人公サイドと絡めかたが失敗している。

わるーい社長が登場するものの、主人公の取引相手となる社員とは別個に登場するためいまいち、悪役として心もとない。

命令系統が下に降りていく様をそのまま見せてくれるわけでもなく、社長の指示→いっぽうそのころ主人公は、と場面が変わってしまう。

ジム(ドミニク・パーセル)は、海兵隊を除隊して、いまは警備員として働いていた。

難病を抱える妻ロージー(エリン・カルプラック)とは子供を持ちたいと思っている。 病気の治療が終わりつつあるものの、妊娠はまだ難しい。

希望を持ちながら定期的に病院に通っていたが、 あるとき、保険適用の上限が下がり金が必要になる。

ところどころに、当時のニュース(模した音声)を挟んでいく。

徐々に金融危機の真っただ中へ突き進んでいくのがわかる。 今になってみると、じわじわと引き返せないところまで行ってしまうことがわかっているので、ひりひりとしたスリラーのようだ。

仕事を増やしても追いつかず 、軍人時代の手当てを不動産投資に回す。

しかし投資担当者の明るい物言いとは裏腹に、価値が暴落、元本を失ったばかりか、追加の支払いを求められる。

なんとか投資した金を取り戻せないかと弁護士に相談すると、訴えるにも金が要るといわれる。

そして、元本をあきらめれば追加の請求だけでも無効にできると妥協案しか出してもらえない。

元本が戻るとしたら、弁護士では対応できない。刑事事件としての扱いになり、検事補しか手が出せないというのだ。

弁護士役は、「あっ、こんなところにもジュリアの兄貴」でおなじみエリック・ロバーツ。やたらと背もたれの緩い椅子にもたれかかって横柄な態度、同情も一切しめさない、不遜演技が板についている。

しかし、こいつが殺されることはない。 演技も役どころも、こいつなら殺してOKみたいな雰囲気をまとっているが、結局殺されることはない。

友人に 弁護士代を工面してもらう。

エドワード・ファーロングが1万ドルも貸してくれるいい友人役。役割はほぼこれだけ。もう痩せる気はないのかファーロング。

検事補に相談しようとアポをとっても、忙しいからとキャンセルされてしまう。

その後、弁護士からいきなりの電話。追加請求されてることが確定し、自宅が差し押さえされてしまう。

ここまでの不幸の積み重ねは真に迫っていていい。

仏頂面のドミニク・パーセルの顔もしっかりと苦悶する男に見えてくる。

しかし、金融機関憎しを描くためのパートのはずなのに、妙に弁護士がムカついたり、検事補が人でなしだったりと焦点がぼける要素が散見される。

行政も役立たずという結論も足されているけど、ヘイト集めが分散されていて、カタルシスをもたらすための展開としては不要だ。

ついに首が回らなくなり、妻は自分が重荷にならないように自殺してしまう。

なぜ離婚して失踪とかせずに、早急に自殺なのか、説得力がない。

たしかに、出て行っても追いかけて探すかもしれない。

そうであってもセリフでそのまま言うとか前振りがいっさいないまま、 ここは自殺しかないと結論を出してしまう。

しかも、その手法が、手首の縦切り。もっと楽な方法があったはず。

茫然自失のジム。ふと町で見かけた検事補に詰め寄ると、決まりきった文言、お気の毒にと言われる。

思わず怒りをあらわにすると、検事は逃げ出そうと道路へ飛び出し、車に引かれて死亡してしまう。

初めての殺しが、過失によって行われ、それによって理性を失うという展開は納得できる。

しかし、元軍人で、妻を失っているのでこの手順は不要だったように思う。

ジムは、タガが外れたように犯人捜しを始める。

情報元が週刊誌や新聞なのは浅はかすぎないか。

陰謀論や被害妄想の社会病質者を描いているならわかるけど、本作は、当時のアメリカ人が味わった不条理の代弁者たる普通の人間のはず。

彼の中の正当性と観客の同情、その憎悪の向かうターゲットはすべて一致しないとならないはず。

通り魔的に関係者を殺し、さらには、ウォール街で自分の投資担当者を狙撃。

さらには窓から見える人を打ち殺していく。

この時点で、自警団的殺人からかなり遠ざかってしまう。

『狼よさらば』方式に必要なものは、安心して殺してOKクズ保証があってこそだ。

今回のような金融犯罪は、そのバランス調整が非常に難しい。

序盤に登場する社長はそれなりに殺意を呼び起こすものの、ジムの担当者はただの下っ端だし、窓越しに狙撃する人は顔さえわからないし、その建物が投資会社なのかも描写されないため、殺しの安心保証が下りていない。

ジムはウォール街で銃を乱射したそのままの足で、自分の利用した投資会社に入っていく。

社員の一人が、妻が妊娠しているから殺さないでくれと言ってきた。 机の上に写真が飾ってあるのを確認し、見逃してやる。

しかし、通り道にいる他の社員は、女も男も関係なく虐殺していく。

社員みなさんのことを知らないだけで、パートナーも子供もいるかもしれないでしょ。

もっと言えば、人の子であることは明々白々なんだからなんだか、問答無用で殺していいはずがない。安心保証が足りない。

せめて殺される直前に犬をいじめていたり、全身に鍵十字のタトゥーがあったりしたらよかったのにね。

そして社長室に乗り込む。

なぜか社長は銃を向けられても強気

「奴隷貿易や武器の売り買いで儲ける商売人こそがアメリカンヒーローだ」

罪悪感などどこ吹く風。

ジムは、銃を机に置き、早く奪えたほうが生き残るというゲームを始める。

そして社長が銃をとる。それと同時に警察隊の突入。 もちろん銃を持った社長が撃たれる。

しかも社長が真犯人という扱いに。

動機は?証拠は??証人は???

まんまと逃げおおせたジム。

「政府が義務を怠ったら、俺が正義を果たす」

パニッシャーみたいなセリフで終幕。

社長に罪を着せるなんてできないでしょ。どれだけ証拠が残ってると思ってるんだ。 たとえ知り合いの警官に見逃されても、立件待ったなしでしょうが。

そこは罪をも背負ってやり遂げたことになるんじゃないの? 殺してそれで済ませるなんて教育にも悪いって。

最後は主人公にも報いを与えてこそヴィジランテものとして納まりのいいでしょうに。

重さが全然違うけど『ペントハウス』とか『アザーガイズ』のほうが、金融クズ野郎復讐ものとして気持ちよく見れた。