『ラストミッション』ヨーロッパ・コープ印の殺戮パパ、ケビン・コスナー版。

『ラストミッション』

3 Days to Kill

2014・米・仏

マックG

IMDb 6.2

Rotten Tomatoes 28%

あらすじ:病気でエージェント引退。でも特効薬のために殺しを請け負う。

ヨーロッパ・コープは気軽にみれていい。そう思いながらNetflixで鑑賞。

ザックリと感想を

好きです。

好きな要素がいっぱいあって、なかなかに楽しめました。しかし、その構成する要素が散漫で一本の映画としてまとまっていないのが惜しい感じです。

でもヨーロッパ・コープならいいか。

ポスト、リーアム・ニーソン。ケビン・コスナー

悩める父親として、ケビン・コスナーはいい配役。

しかし『96時間』リーアム・ニーソンはすらりとした長身で、体躯だけで戦闘力に説得力があった。問答無用に無敵のセガールとも違い、ケビン・コスナーはどちらかというと知略にたけた人物という印象だったので、本人の戦闘力が高いイメージはない。

しかし本作はほぼ無敵の男であり、リーアム・ニーソン映画の主人公を思わせる。だが、ケビン・コスナーは歳を重ねてもかっこいいとは言えるものの、腹の出た年相応の体型でのアクションは少し見栄えが悪い。

もう少しだけ体を絞ったスマートなコスナーが見たかった。

本作の魅力は、『96時間』のようなタイトなアクションではない。むしろコメディ要素の方が楽しい。

ほぼコメディ

ヨーロッパ・コープの同ジャンル映画、『96時間』のようなタイムリミットサスペンスとは違い、マックG監督の前作『ブラック&ホワイト』みたいなコメディ。

ターゲットの武器商人を探す途中、本筋と関係ないシーンがいくつもある。娘との関係も、お仕事パートとはまったく関係がないまま話が進む。

どちらかといえば『ブラック & ホワイト』のような、裏稼業を隠していることによるコメディシチュエーションの方がアクションよりもいい場面が多い。

特に、敵の居所を知るために拉致した下っ端と、子育ての悩みを分かち合うあたりは緊迫感は一切なく非常に愉快。

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まとめると

面白い要素があるとは言え、

殺しを請け負うこと、

余命いくばくもない父親、

娘との距離感、

コメディ要素、

すべてが別個に存在しているので、テンポが悪いし、各々の足を引っ張りあって魅力を減じている。
一番引っかかるのは、病気の設定。かなりテキトーでピンチを演出するためだけに具合が悪くなるので、死ぬ死ぬ詐欺みたいになってしまっている。

どうせならコメディに振り切ったほうが、気楽に楽しめてよかったと思った。

↓ネタバレ感想↓

CIAエージェントのイーサン(ケビン・コスナー)は任務中に倒れた。

病院で目を覚ますと、悪性腫瘍により、余命はもって5カ月と宣告される。

イーサンは皮肉を込めて「今年のクリスマスはなしか」とこぼす。

さり気なく、映画の季節性と、大まかなタイムリミットが提示されるいいセリフ。

仕事は引退し、妻と娘がいるパリへ。

ここで本作随一の謎設定。

イーサンは、パリの集合住宅に部屋を借りている。

久しぶりに帰宅すると、留守のうちに勝手に不法移民の家族が住み着いていた。

追い出そうとしたが、フランスには実際に冬の間の強制退去は違法という法律があるため、無理に退去させるのは違法行為になってしまう。

移民の中には妊婦もいる。出産までは居ていいと、しぶしぶ共同生活することに。

この要素、あとあと本筋と関わってこない。

イーサンが出産場面に感動したり、小さな男の子とすこし仲良くなったりするけど、敵に人質にされるとか、娘との関係改善のきっかけになったりはしない。

多少、家族テーマの補強に貢献はしているものの、尺を稼いでいるような珍妙な要素だ。

『扉をたたく人』のような異文化交流モノの片鱗だけみせてあとはなにもない。ある程度の期間は住まいを同じくするものの、殺しの仕事があるので結局留守がち、隠し部屋の武器を回収したり、バスルームで尋問するくらい。なぜこんな設定をねじこんだのか、謎だ。

ただ終盤で、出産に立ち会う場面でのセリフはよかった。

「出産に立ち会うのは初めてだ」とイーサン。

「娘さんの時はいなかったのか」

「仕事だった。大した仕事じゃない内容も忘れてた。でも立ち会えなかったことはいつまでも覚えてる」

彼の後悔が伝わってくるいいセリフだ。

そして生まれた赤ちゃんの名前はイーサンと名付けられた。

「優しい人の名前だから」

とくに本筋とは関係ない。いい場面なだけに関連の薄さが残念。

妻(コニー・ニールセン)と会い、病気について話す。

娘のゾーイ(ヘイリー・スタインフェルド)には黙ったまま。

仕事のせいで留守がち、娘とは距離ができている。ご機嫌取りに紫いろの自転車を買ってきたが、

「紫が好きなのは小さいころ」と受け取ってもらえない。

しぶしぶ自分で乗って帰る。今後のことを考えながらパリの街を疾走する。

このシーンのBGM

映画と自転車は相性がいい。

この場面も、パリの街並みの美しさと絵になるケビン・コスナー、疾走感のあるBGM。娘との距離感のもの悲しさが相まって、映画から浮き上がるほどいいシーンになっている。

そこまでドラマチックな作品でもないため、さほど意味のある場面になっていないのが残念。

娘に振られてしょんぼりしていると

街中で、女が話しかけてきた。彼女の名前はヴィヴィ(アンバー・ハード)

正体不明の武器商人ウルフを探していて、イーサンの手を借りたいと言ってきた。

報酬は多額の金と、実験段階の薬。

イーサンは、家族に遺産を残すためと、藁にもすがる思いで薬の効果に賭け、仕事を受ける。

ウルフの手がかりは、関係のある会計士。

まずは、会計士の情報を持っている口髭の男から情報を得るようにいわれる。

イーサンは、無敵の立ち回りでボディーガードたちを倒し、髭の男を取り押さえる。

省略表現も相まってセガール級の強さ表現になっている。

ヴィヴィは顔を見て、これは違うという。こちらの男だと床に倒れているほうを指す。

イーサンは、それはヤギ髭だと反論。口髭だと言い返すヴィヴィ

しばらく口髭、ヤギ髭かどうかで長ったらしいオフビートな会話が交わされる。リアリティのないほどの異常な強さと気の抜けた会話、やっぱりマックGはコメディにしたかったと思われる。

情報をたどって、下っ端の男をとらえる。尋問中に、娘が居ると命乞いされ、なぜか娘の扱いについて相談するイーサン。

さらにはゾーイが学校で問題を起こして呼び出され、下っ端を車のトランクに入れて学校へ。

この下っ端の男がこまかい笑いを持っていく、

イーサンに付きまとわれて恐々としながら娘の相談になると友達のような接し方になったり、

イーサンが何度も車のトランクにいれて連れまわすもんだから、しまいにはトランク慣れして、コートを丸めて枕がわりにして進んでトランクに入っていく。

「娘の迎えもあるから5時には返してくれ」

慣れたものである。

イーサンはヴィヴィに会いに行き、薬を打ってもらう。会計士の情報をもらい捕まえにいこうとすると。

「もっといい服を着ていきなさいと」といい。

連れてきたボディーガードに「スーツを脱いで」

ボディーガードのスーツをもらうイーサン

帰宅後、娘にスーツ姿を褒めてもらい喜ぶ。

そしてプロムの練習だと、娘とダンスの練習。

素敵なシーン。ほかにも娘が自転車に乗れない事がわかり練習したりといい雰囲気だけど、やっぱり本筋と絡まない。

会計士を拘束し、ウルフの居所を聞き出す。

しかし、いきなり娘から電話がかかってきて、パスタソースの作り方がわかるかと質問される。

どうしても娘の役に立ちたいイーサン。

ちょうど会計士はイタリア人だ。訊いてみると、伝統のパスタソースの作り方を教えるという。

電話を代わって、イーサンの娘と話す会計士。

時間を掛けてソースのレシピ教え、合間に母の思い出を語って時間を稼ぎつつ、同情を得ようとする。

生き残るのに必死なのに話してるのは、母の思い出で、話し相手は脅迫してくる奴の娘という幾重にもオカシイ秀逸なコメディシチュエーション。

やっぱりコメディ全開で見たかった。

会計士からの情報を得て、ついにウルフを見つける。なんとか追い詰めるけどいつもの持病で倒れる。

目覚めるとウルフは取り逃がしていて、ヴィヴィに介抱されていた。

イーサンのスーツはぼろぼろに

「新しいスーツがいるわね」といいながらボディーガードを見るヴィヴィ。無言で脱ぎ始めるボディーガードが笑える。

娘のプロムに同席。エレベーターに乗り込むと、取り逃がしたウルフとばったり再会する。

いくら金持ち学校のパーティーで親も集まるからって、闇の武器商人の親玉と元CIAが鉢合わせる確率っていかほどかしら。

しかもせっかく妻と娘がいるのに、別に人質に鳴ったりしない。安全にイーサンが皆殺しするばかりだ。

ウルフを追い詰める。しかしイーサンは引き金を引かない。そこにヴィヴィが現れて、殺せという。

お前はどこにいたんだ。ウルフの居所がわかってたなら連絡してきなさいよ。

「妻に、やめてと言われた」イーサンは殺す気はない。

ヴィヴィはそれに応えるようにウルフを射殺する。

ボスを殺さなかったからって、下っ端は何人も殺してるけどね、何コレ。

数ヶ月後。クリスマス。

序盤のささやかなセリフから、クリスマスまで生き延び、寛解に向かっていることがわかる。

親子三人、海辺の小さな家でクリスマスを過ごすようだ。

プレゼントを開封すると、例の薬と、ヴィヴィからのメモが、また仕事の依頼があるのかもしれない。

さすがにあれだけの事件を起こしていおいて、めでたしめでたしはないだろうと思いながらも、ヨーロッパ・コープならいいかという気もしてくる。

いい場面、いい要素(主にコメディ)がたくさんあるけどもなんだか一本芯が抜けてしまっているような印象。しっかりとコンセプトがまとまっていれば96時間とは別のシリーズになれたかもしれない。

でもヨーロッパ・コープ基準で言えば見やすくて面白い方ではないかと。